月報 「聴診器」 2017/05/01
4月に東京で内科学会総会が行われました。僕も参加して発表してきました。14日は休診にしたため皆様にはご迷惑をお掛けしました。発表のほうは無事に終わり、好評価を頂きました。多くの医師と議論をすることができ、また、他の演者の発表をたくさん聞くこともできてとても勉強になりました。これも、臨時休診にご理解をいただきました皆様のおかげです。ありがとうございました。
23 心筋症2 ④二次性心筋症
前回までは、心臓の筋肉自体の異常で起こる病気、拡張型心筋症や肥大型心筋症についてお話をしてきました。これらの心筋症がなぜ起こるかは正確にはわかっていませんが、遺伝的な異常や感染症が関与していると考えられています。
ただし、心筋症の中には他の病気に引き続いて起こるものがあります。これを続発性心筋症や二次性心筋症と呼びます。
サルコイドーシス性心筋症;サルコイドーシスは肺や皮膚、目などに結節を作る病気です。基本的には良性の病気ですが、心臓に結節を作ると不整脈や突然死の原因となったりします。典型的には中高年女性で房室ブロックを伴うことが多いといわれています。心エコーでは局所的な心筋の菲薄化を認めますが、心筋全体に病変が広がっていれば、かえって特徴的な所見に欠ける場合があります。サルコイドーシスが全身には広がらず、心臓だけにとどまっている場合もあり、診断はむつかしいことがあります。治療はステロイドホルモンや免疫抑制剤が基本になります。
アミロイドーシス;アミロイドと呼ばれる小さな物質が体の隅々にたまる疾患です。胃腸の粘膜にアミロイドが貯まると下痢や消化不良が続いたりします。神経にたまれば手足がしびれてきたり排尿が困難になったりします。アミロイドが心臓にたまれば、心筋が厚ぼったくなったり脈拍が遅くなったりします。末期には心臓の周りに液体がたまり心不全となります。
筋ジストロフィー;先天的に筋肉が障害を受ける病気です。全身の筋肉が弱ってくるため歩行がしにくくなってきます。病気が心臓にまで波及すると、心臓の動きが悪くなります。
皮膚筋炎;膠原病の一種で、自分の皮膚や筋肉に対する自己抗体が出来て炎症を起こす病気です。全身の筋肉が弱まってきますが、心臓まで波及すれば心臓の収縮が弱くなります。
薬剤性心筋症;抗がん剤の種類によっては心筋がダメージを受け、収縮が低下することがあります。アントラサイクリン系の抗がん剤による心筋症が有名ですが、ハーセプチンなどの生物学的製剤による心筋症の報告も増えてきています。抗がん剤による心筋症障害はすべての症例に起きるわけではなく、ごく少数の患者さんにまれに起きる副作用です。ただし、どの患者さんに心筋障害が起きるかは前もってわからないので、抗がん剤使用歴のある患者さんで、気になる症状がある場合には心エコーをとるようにしています。
頻拍惹起性心筋症;頻拍性不整脈が続くと心臓が疲れてしまって動きが悪くなります。アブレーションなどで頻拍の治療が出来れば、心臓の動きも元に戻ります。
いずれの続発性心筋症でも源疾患の治療が第一になってきます。心筋症を疑ったときには、これらの疾患をチェックすることも大切です。
上野循環器科・内科医院 上野一弘