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月報「聴診器」 1月号発行しました!

月報 「聴診器」 2019/01/01

明けましておめでとうございます。今年は年号が変わる年です。行事が多く予定され、大型連休もあります。慶賀すべきことも多々ありますが、事務作業などは多忙になるでしょう。また、オリンピックの前年でもありあわただしい一年になりそうです。

昨年末に崎村先生が引退されました。大変勉強熱心な先生で、近年でも最新の治療や情報に精通されていました。先生にその秘密をお聞きしたところ、日々の努力の大切さを教えていただきました。ともすれば、我々医師は知識を得ることよりも、権威をかざすことに熱心になりがちです。慢心を諭してくれるような先生の姿勢は僕の目標とするところです。尊敬する先生の引退は寂しくはありますが、僕も努力を重ねたいと思います。

 

26 循環器トピックス④  「拡げるべきか、否か」の補足

前回は「拡げるべきか、否か」との題名で経皮的冠動脈形成術の適応についての議論を紹介しました。狭いからと言って、すぐ血管を拡げる必要があるわけではないとの趣旨です。ただし、これは単純病変の場合についての話です。

まず、多枝病変や重症病変では血行再建術のほうが薬物療法単独よりも優れています。心臓には冠動脈が3本あります。そのうち一本の比較的末梢の血管が一か所だけ狭い場合には、血行再建術と薬物療法単独との差は微妙になってきます。しかし、血管が二本も三本も狭い場合の予後は悪く、血行再建術が必要になってきます。また、二本の左冠動脈は一本の「左冠動脈主幹部(LMT)」から分岐しますが、このLMTに狭窄病変がある場合も予後が悪く血行再建術が必要になります。もっとも、この際の血行再建術として、カテーテルによる経皮的冠動脈形成術を選ぶか、開胸による冠動脈バイパス術を選ぶかは微妙なところです。欧米ではバイパス術をとる場合が多く、日本ではカテーテルによる治療を選ぶことが多いような気もします。論文ではバイパス術のほうがやや優れているとの結論が多いようですが、その多くは欧米で行われた研究がもとになっています。日本での学会では「いやいやカテーテル治療も優れているよ」との声が多く聞かれます。さらに病院によっても異なり、医師によっても異なります。これは好みの差としか言いようがないと思っています。

急性期には絶対に血行再建術が必要です。冠動脈が詰まってしまうと心筋が壊死して心筋梗塞になります。心筋梗塞は急性期に8%が死亡する病気です。急性期を生き延びても、心機能が低下すれば日常生活は制限され、寿命も短くなります。心筋梗塞の一歩手前、冠動脈が詰まる寸前の状態は不安定狭心症と呼ばれます。この二つの病態を包括して急性冠動脈症候群と称するときもあります。このような場合にはできるだけ速やかに血管を拡げて血流を再開する必要があります。通常はカテーテル治療が第一選択となります。

単純病変ではカテーテル治療の功罪が議論され始めて、薬物療法が見直されています。その昔、僕が研修医のころはカテーテル治療の勃興期で、注目を浴びていました。みんなが新しい治療に夢中になる中、当時の教授は「そんなことして、血管内皮をむやみに傷つけてはいけない」と沈着な態度でした。正直、その当時の僕は「教授も年を取って新しいものについていけないなぁ」と軽んじていましたが、今となってその慧眼に頭を垂れる思いです。

上野循環器科・内科医院  上野一弘

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