月報 「聴診器」 2020/06/01
新型コロナウイルス感染は４月８日の緊急事態宣言後、徐々に新規感染者が減少し、福岡県では5月14日に、全国では5月25日に宣言解除されました。政府、医療関係、国民が一丸となって努力した結果だと思います。特に、皆さん一人一人が感染予防を意識した行動をとったことが大きかったと思います。ただし、5月下旬には北九州市で感染者が急増しており、予断を許さない状況です。徐々に、宗像市を含めた福岡県全体に広がる恐れがあります。
自粛要請は解除されていますが、元通りの生活ができるわけではありません。新型コロナウイルスは感染を起こしやすいグループと、感染を起こしやすい行動が分かっています。新型コロナウイルス感染者からのウイルスの排泄量は年齢とともに増えていきます。また、高齢者ほど重症化しやすいことも分かっています。つまり、高齢になるほど他人に感染させやすく、発症しやすいと考えられます。新型コロナウイルスの感染様式は、飛沫感染と接触感染です。大声で話したり、歌ったり、運動で激しい息遣いをすると、ウイルスを含んだ飛沫が多量に排出されると思われます。以上を考えれば、中高年のカラオケパーティー、合唱の練習、大勢での会食などは慎重になるべきと思います。もちろん、体調の悪い方はこれら行事に参加してはいけませんが、ウイルスの排出は発症2日前から多くなりますので、無症状の段階でも感染性を有することがあります。もうしばらく、我慢をしてもらったほうがいいと思います。
当院でも対策を始めています。これまでの感染防御は続けます。普通の診察は基本的に予約制にして、待合室が混みあわないようにしたいと思います。待合室では場所を指定して、間隔をあけて座ってもらい、着座した席は固定します。待合室に入る人数を制限して、多い時は車などで待っていただくつもりです。
新しい生活様式は不自由と思いますが、ウイルスとの戦いは長丁場になります。一緒に乗り越えていきましょう。
27 高血圧２－高血圧の薬物治療 降圧薬の種類
高血圧に対して薬物療法を行う場合、降圧薬を使用します。現在では様々な種類の降圧薬が開発されており、病態にあわせた薬を選択することが出来ます。沢山の降圧薬は作用の仕方によって分類されます。カルシウム拮抗薬、アンギオテンシン変換酵素阻害薬、アンギオテンシン受容体拮抗薬、レニン受容体阻害剤、アルドステロン拮抗薬、利尿剤、ベータブロッカー、アルファブロッカー、中枢性降圧薬などです。それぞれのグループ内でも更に種類が分かれていきますが、薬の特徴や副作用は非常に似通っています。これはお酒の分類方法と似ています。アルコール飲料という大きな分類があって、その中にビール、ウイスキー、日本酒、焼酎などの大きな分類がありますが、更にその中に沢山の種類のお酒があります。しかし、キリンラガーもアサヒドライも多少の味の差はありますが同じビールの仲間ですから、獺祭やシーバスリーガルとの間ほどの差はありません。薬も同じグループの薬は同じような作用をします。グループごとに長所や短所があり、その組み合わせを考えて処方しています。あるグループの薬を試して、体に合わないときには別のグループの薬にすることが多いです。また、薬の組み合わせを考える場合も、グループごとの相性で考えていきます。次回からは、それぞれのグループごとに特徴を説明していきます。
上野循環器科･内科医院 上野一弘