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聴診器

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月報 「聴診器」 2017/03

月報 「聴診器」 2017/03/01

2月はずいぶん寒い日も多く、インフルエンザも一気に増えました。それでも、例年と比べるとやはり暖かかったのか血圧が変動したり、心不全が悪化する方は比較的少なかったような気がします。もうすぐ春です。あと少し頑張りましょう。

23 心筋症2 ②肥大型心筋症

前回は、拡張型心筋症の話をしました。拡張型心筋症は心臓が拡張する病気です。心筋は薄くなり収縮も低下してしまいます。しかし、心筋症の中には、心筋壁が厚くなってくる病気があります。これは肥大型心筋症と呼ばれます。

高血圧や弁膜症では、心臓は無理をして働くので心筋が厚くなっていきます。一方、肥大型心筋症では、特に外的要因もないのに、筋繊維一本一本が太くなってきます。心筋繊維が太くなっても、心臓がパワーアップするわけではありません。むしろ、不都合なことが出てきます。心臓の筋肉が厚ぼったくなると、心臓が硬くなってきます。心臓は血液を送り出すと同時に血液を受け取っていますが、心臓が硬くなってくるとこの血液の受け取りが不得意になってきます。そうすると、一見心臓の収縮はいいのに心不全を起こしやすくなってきます。また、心筋が肥大すると不整脈がよく起きるようになってきます。脈拍は心臓の中に電気が流れることによって調節されていますが、心臓の筋肉がダメージを受けた状態では、この電気の流れが乱れて不整脈が起きやすくなっているのです。特に肥大型心筋症では、あまり病気が進んでない段階でも危険な不整脈が出ることがあります。中には、遺伝的に肥大型心筋症があり、突然死が多い家系も見つかっています。

肥大型心筋症の中でも閉塞性肥大型心筋症と呼ばれるものは予後があまりよくありません。これは、左心室の出口が狭くなる状態で、心臓に異常に負担がかかる病態です。左心室は大動脈から全身に血液を送り出しています。その左心室から大動脈へ向かう部分の筋肉が厚くなることがあります。厚くなると出口が狭くなってきます。狭くなってくると左心室が血液を送り出すのに余計圧力をかけなければいけなくなり、心臓の中の圧力が極端に高くなります。たとえば、全身の血圧が120mmHgぐらいでも心臓の中では200mmHg以上ある場合があります。圧力が高すぎると心臓が収縮できなくて動かなくなることもあります。この閉塞性肥大型心筋症に対しては、いろいろな薬物で治療を行います。心臓の収縮を穏やかにする薬や収縮のタイミングを変える薬が有効な場合がります。それでも狭窄が改善されなければ、ペースメーカーで治療を行います。どうしても、治療が困難な場合はカテーテルを使って肥大した部位に人工的に心筋梗塞を作る方法も開発されています。昔は、弁置換術や心筋を削る手術も行われていましたが、最近ではほとんど行われることはありません。

肥大型心筋症の患者さんで、徐々に収縮が低下してくる場合が時々あります。これは、肥大型心筋症拡張相と呼ばれます。一見、拡張型心筋症と似たような状態に見えますが、収縮障害だけでなく拡張障害も顕著なので、予後は拡張型心筋症よりも悪いといわれています。

心電図異常や不整脈の患者さんに心エコーをすると心肥大が見つかることがあります。ただし、心肥大があればすべてが肥大型心筋症ではありません。多くは高血圧による心肥大で肥大型心筋症とは肥大のパターンがやや異なります。他にも、アミロイドーシスや代謝疾患との鑑別も必要です。

上野循環器科・内科医院  上野一弘

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