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聴診器

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月報 「聴診器」 2017/04

月報 「聴診器」 2017/04/01

3月はやや暖かくなったかなーと思っていたら、なんだかいつまでも冷えましたね。おかげで桜もまだ満開にはならないようです。インフルエンザも再び増えてきているようです。さらに、今年はスギ花粉がかなり多いようで、花粉症がつらい人も多いようです。

4月は東京で内科学会総会が行われます。今回は僕も発表する予定です。学会での発表は大学病院や大きな病院の医師が行うのがほとんどです。今回の総会でも、診療所からの演題はわずかでした。確かに大きな病院でないと珍しい病気や新しい治療法のデータは集まりません。それでも地域医療の中で得られる知見も大切と思います。このため、14日には臨時休診をさせていただきます。皆様には大変ご迷惑をおかけしますが、当診療所のレベルアップのためとご容赦ください。

23 心筋症2 ③ARVC

これまで、拡張型心筋症と肥大型心筋症の話をしてきました。もう一つ拘束型心筋症という病気もあります。これは心筋が固くなり、拡張しにくくなる病気です。非常に珍しい疾患なので、あまり詳しくは触れません。

今回は不整脈源性右室心筋症(Arrhythmogenic Right Ventricular Cardiomyopathy: ARVC) についてお話をします。これも、珍しい病気ですが、以前僕はこの病気の研究をしていたので、ちょっととりあげさせていただきます。

50年ほど前にイタリアで列車事故がありました。山から下ってきた列車がブレーキをかけずに終点の駅に突っ込んでしまったのです。どうやら運転手が気を失ってブレーキがかけられなかったようです。大勢の人と一緒に運転手さんも亡くなりましたが、遺体を解剖してみると右心室が異常に大きく、心筋に脂肪がたくさん混じっていました。

心臓には右心房、右心室、左心房、左心室の4つの部位があります。このうち、左心室は全身に血液を送っている部位で、左心室が止まれば人間は死んでしまいます。他の3つの部位が止まっても、多少の不具合は生じますが、命に別状はきたしません。ところが、原因不明の突然死を起こす人たちの中に、この運転手さんのように右心室が異常大きく、右心室の心筋に脂肪組織が浸潤した症例が多く存在するのが分かって来ました。このような症例を多く集め、新しい心筋症としてF.Marcus医師とG. Fontane医師がARVCと命名し1982年に発表しました。

ARVCでは徐々に右室心筋が障害を受け、脂肪に置き換わっていきます。このため、右心室の収縮力が低下し、右心室が拡張してきます。右心室の筋肉が傷害されているため、そこから不整脈がよく出てきます。特に、心室頻拍などの致死性不整脈が多く見られます。この不整脈が突然死の原因になるのです。しかし、左心室は正常な場合が多く心不全症状などは早期には出現しません。したがって、これまでは無症状であったのに突然不整脈が出現して失神したり、死亡したりすることになります。おそらく、前述の運転手さんも不整脈の発作によって気を失っていたのだろうと思います。

ARVCでは心電図にε波と呼ばれる特徴的な波形が認められ、心エコーでは右心室の拡張が認められます。CTやMRIでは右室の脂肪変性を認めます。ただし、こういった特徴的な所見に欠ける症例もあり、カテーテル検査や心筋生検が必要な場合もあります。

上野循環器科・内科医院  上野一弘

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