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  • 月報 「聴診器」 2016/02

    月報 「聴診器」 2016/02/01

    専門医制度の改正にともない、日本内科学会もこれまでの「内科専門医」から「総合内科専門医」に変更することとなりました。数年前から移行処置で試験が行われています。僕は昨年受験しました。久しぶりに内科全般を勉強しなおしてみると、専門外の分野での進歩に驚かされます。試験は無事合格しましたが、今までの不勉強を反省するよい機会となりました。人間、安きに流れやすいものですね。

    21 心筋梗塞2 ①心筋梗塞とは

    前回までは狭心症の話をして来ました。極言すれば、狭心症の診断や治療は心筋梗塞の発症を防ぐことが目的です。狭心症で亡くなってしまう場合はほとんどありませんが、心筋梗塞は今でも10%が急性期に死亡する疾患です。たとえ、急性期を乗り切っても、心機能が低下し、生命予後は悪化してしまいます。

    冠動脈が狭くなってくると、心臓の筋肉を養う血液が不足し、狭心症となります。冠動脈がつまってしまえば、血液が流れなくなり心筋が壊死してしまいます。壊死した部分の心筋は動かなくなってしまいます。これが心筋梗塞です。心臓の壊死は血管が詰まって、だいたい30分後から始まり、8時間ぐらいかけて完成します。最初は小さな範囲の筋肉が死んでしまうのですがそれが徐々に広がっていくのです。その後、壊死した筋肉が取り除かれ、固い繊維に置き換わります。赤身の肉がスジに置き換わるのです。しかし、繊維は筋肉ではありませんから、心筋梗塞になった部分は再び動き出すことはありません。一度、死んでしまった心臓の筋肉は、血行が再開しても元には戻りません。つまり、心筋梗塞を一度起こしてしまえば、完治はしないのです。

    心臓のどの部分の筋肉がどれぐらい壊死するかは、詰まった場所と、再疎通までの時間によって決まります。末梢の血管が詰まり、すぐに再疎通ができた場合は壊死する心筋は少なく、予後もよいといわれています。反対に左前下行枝近位部がつまり、再疎通まで時間がかかったり、詰まったままになっていれば多量の心筋が壊死します。心臓の機能や体全体に与える影響も大きくなり予後は悪くなります。さらに根元の左冠動脈主管部がつまると心臓の3分の2以上が壊死してしまいますので生命の維持が大変困難になります。ここがつまると突然死をすることもあります。

    昔は、心筋梗塞の急性期の死亡率は40%と言われていました。治療法がすすんだ現代でも急性期の死亡率は10%程度と考えられています。心筋梗塞の死亡は急性期に集中しています。発症してすぐは、急激にポンプ機能が落ちるので血行動態が不安定になり血圧が下がってショック状態になることもあります。気を失うことも珍しくはありません。心筋梗塞の範囲が大きかったり、僧房弁閉鎖不全症や心室中隔穿孔などを合併すれば肺がむくんできます。これは肺水腫と呼ばれ呼吸困難を起こします。致死性の不整脈が起きることもよくあります。このため、病院に来る前に亡くなってしまうこともあります。壊死した心筋が破けてしまうこともあります。この場合はほとんど助かりません。

    心筋梗塞を発症すると、激しい胸の痛みを自覚します。痛みはピンポイントではなく、手のひら以上の広さがあり、肩に放散することもあります。冷や汗や恐怖感を伴うことも特徴です。胸の痛みははっきりせず、嘔吐や失神で発症する場合もあります。

    上野循環器科・内科医院 上野一弘

  • UP通信 2016/1月号

  • 月報 「聴診器」 2016/01

    月報 「聴診器」 2016/01/01

    あけましておめでとうございます。年齢とともに時間のたつのが早くなるといいますが、本当にこの一年はあっという間でした。いくつかの目標は達成でき、成果を残すことができました。一方、未達成のものもあり、また新たな課題もできました。今年も努力を惜しまず前進したいものです。

    20 狭心症2 ⑦狭心症の治療 治療法の比較

    前回まで狭心症の治療を説明してきました。では、どの治療法が優れているのでしょうか。

    日本での狭心症の治療は、カテーテルを使用したものが主流です。カテーテルで狭窄血管を広げると、直後の造影はとてもきれいになります。一方、冠動脈バイパス術は胸に大きな傷が残るし、手術は怖い感じがします。薬物療法だけで狭窄部をそのままにしておくのも不安です。カテーテルでの治療は局所麻酔で行われ、手首に小さな傷ができる程度です。入院期間も2-3日で済みます。同じような効果が得られるならば、冠動脈バイパス術よりもカテーテル治療を選択する人が圧倒的に多数だとおもいます。しかし、カテーテル治療が一番すぐれているわけではありません。

    2007年にCOURAGE研究が発表されました。これは、カナダで行われた狭心症を対象にした臨床試験です。強力な薬物療法を行った患者さんにカテーテル治療を行った症例と行なわなかった症例の長期予後を比較したものです。カテーテル治療を行った群では初期に胸部症状は消失しました。しかし、長期的に見ると心筋梗塞の発生率や生命予後は改善しませんでした。これは、かなりの衝撃をもたらし、それまでのカテーテル治療を見直すきっかけとなりました。まずは、狭窄部位が心筋梗塞を起こすのではないということです。狭い血管を広げても、別の部位にあった不安定プラークの被膜が破けて心筋梗塞を発症してしまうのです。心筋梗塞の予防には、カテーテル治療ではなく薬によるプラークの安定化が必要でした。つぎに、重症度を見た目だけで判断していたことの反省です。それまで、狭い病変をみるとすぐにバルーンやステントで広げていました。しかし、その中には、見た目は狭いけど、血流は減ってない血管も含まれていました。今ではプレッシャーワイヤーや血管内エコーを利用して、本当に血流が減っている血管だけを治療するようにしています。

    以前は多くの病変を持つ症例や、左主幹動脈の症例に対してもカテーテル治療が行われていました。カテーテル治療を行っているグループ内では、より困難な症例を治療することが競われていました。僕にも苦い思い出があります。狭心症の患者さんを総合病院に紹介したところ左主幹動脈を含む複数病変が見つかりました。患者さん本人が手術を希望されず、カテーテル治療を選択されました。しかし、治療中に血管が閉塞し、その患者さんは亡くなってしまいました。

    バイパス術にも手術時の合併症があるのは事実です。しかし、長期予後の改善は認められており、特に複数病変の症例や左主幹動脈の症例ではカテーテルよりも優れています。今ではSYNTAX scoreなど国際的な指標が作られ、カテーテル治療のリスクが高い症例についてはバイパス術を勧めるようになっています。

    カテーテル治療が悪いというわけではありません。特に、心筋梗塞や不安定狭心症など急性期の治療については必要不可欠な治療法です。一方、不必要な治療はしないこと、薬物治療はきちんとおこなうこと、無理な治療はしないことが大切です。それぞれの病変に合わせて、治療法を選択してもらいましょう。

    上野循環器科・内科医院 上野一弘

  • UP通信 2015/12月号

  • 月報 「聴診器」 2015/12

    月報 「聴診器」 2015/12/01

    今年もあと一か月となりました。早いですね。今年は心臓リハビリテーションの開設というビックイベントがありましたが、皆様のおかげで順調に乗り切ることができました。ありがとうございます。よかったこと、楽しかったことだけ覚えて来年に臨みたいと思います。

    20 狭心症2 ⑥狭心症の治療 冠動脈バイパス術

    狭心症の治療で、薬物治療、カテーテルでの治療と説明してきましたので、今回はバイパス手術の説明になります。バイパス手術は文字通り冠動脈の狭窄部位を迂回(バイパス)して血流を確保する手術です。当初は、足の静脈を摘出し、それをバイパス血管(グラフト)としていました。大動脈に小さな穴をあけ、静脈グラフトを吻合し、逆端を冠動脈に吻合する方法です。その後、内胸動脈を使用する方法も開発されました。内胸動脈は胸壁の前面を走行しており、少し走行を変更するだけで、心臓に近づきます。特に左内胸動脈は冠動脈左前下行枝の近傍を走行しますので、自然のバイパス血管として使用できます。現在では複数のバイパスを行う際には、内胸動脈と静脈グラフトを併用します。冠動脈は三本あり、右冠動脈は心臓の右側、左前下行枝は心臓の前面、左回旋枝は心臓の裏側を走行します。例えば、右冠動脈と左回旋枝には静脈グラフト、左前下行枝には左内胸動脈を使用することが多いようです。右内胸動脈を左前下行枝に、左内胸動脈を左回旋枝に吻合するパターンもあります。まれな例では、手の橈骨動脈を摘出して使用したり、胃の動脈の走行を変えて冠動脈に吻合することもあります。実際にどのようにバイパス血管をデザインするかは、病変部位や吻合予定の血管の走行、病院の考え方で異なります。

    心臓は絶えず動いていますので、そのままではうまく吻合できません。そのため、バイパス手術の際には、心臓を止めて行われます。この間は、人工心肺を使用して体を維持します。手術が終われば、再度心臓を動かし、人工心肺から離脱します。しかし、人工心肺の使用にはいろいろなリスクがあります。人工心肺使用中は、血栓ができやすく脳梗塞などの塞栓症のリスクが増えます。このために抗凝固薬を投与しながら人工心肺を使用しますが、逆に出血が多くなってしまうこともあります。心臓を一回とめますので、弱った心臓では心拍が再開しないこともあります。

    最近では拍動下でも心臓を固定できる特殊な器具が開発されたおかげで、人工心肺を使用しないでバイパス手術ができるようになってきました。オフポンプバイパス手術と呼ばれます。手技的には難しいようですが、手術時間が短時間で済み、合併症も少なく、入院期間も短くて済みます。拍動下で吻合するので、高度な技が必要とされますが、バイパスの開存率は人工心肺下手術と遜色ないようです。オフポンプバイパス術は急激に広まり、今ではバイパス術の約半数がこの術式で行われています。

    さらに、最近でロボットを使用した手術も行われています。完全自動化されたロボットではなく、医師がモニターを見ながら、器具を遠隔操作するものです。開胸はせずに、棒状の器具を胸腔に入れて、内視鏡的に行います。行っている医師は、成功率も高いと発表していますが、危険性を危惧する医師もあります。今のところ、ロボットを使用した冠動脈バイパス術は、保険適応にはなっておらず、行っている病院もわずかです。なお、他の臓器では、ロボット手術が保険適応になっている病気もあります。

    上野循環器科・内科医院 上野一弘

  • UP通信 2015/11月号

  • 月報 「聴診器」 2015/11

    月報 「聴診器」 2015/11/01

    10月24日と25日に、黒崎で日本心臓リハビリテーション学会九州地方会が行われました。当院でもたびたびお世話になっているJCHO九州病院の折口先生が会長でした。開会式に引き続いてシンポジムが行われ、当院の看護師の那須さんが講演を行いました。診療所での心リハ施設の経験について話してもらいました。とても好評で、大きな拍手をいただきました。

    20 狭心症2 ⑤狭心症の治療 カテーテル治療

    狭心症の治療は、薬物治療、カテーテルでの治療、バイパス手術と分かれますが、現在はカテーテル治療がその主流となっています。

    カテーテル治療は、カテーテルという細い管を血管に挿入して行われます。基本は細い風船を使用することです。診断時に使用したものよりさらに細く、やわらかいガイドワイヤーを使用します。このワイヤーを冠動脈の狭窄部に通過させます。細長い風船をワイヤーに沿わせて病変部に到達させ、風船のなかに造影剤を入れて広げます。圧力をかけて風船を膨らましますので、冠動脈の狭窄部を無理やり広げられます。何回か風船を広げて造影を行い、満足する形になったら風船を抜いて終了です。

    風船治療を行うとしばらくは症状もなく過ごせます。しかし、3割程度では冠動脈が再び狭くなることがわかってきました。そこで登場したのがステントです。ステントは金網でできた細長い筒状の構造物です。先ほどの風船にくっつけて病変部に運ばれます。風船が縮んでいるときはステントも細くなっていますが、風船が広がるとステントも広がります。風船を縮めて抜いた後でも、ステントは金属でできているので、広がったままです。ステントの広がり具合は造影所見で判断することが多いのですが、最近では血管内エコーでステントと血管の密着具合を確認することも多いようです。ステント導入で再狭窄率は2割程度に改善しました。

    それでも再狭窄はありましたので、薬剤コーティングステントが登場しました。再狭窄は冠動脈内皮の過剰増殖が主体といわれています。その増殖を抑える薬剤をステントにしみこませたものです。この新しいステントによって再狭窄は1割を切るようになりました。薬剤コーティングステントが出た当初は血栓や通過性の問題がありましたが、改良を重ねられています。

    それでも、すべての症例で再狭窄がないわけでもありません。血栓についても依然大きな問題で、ステントを入れた方は、血栓予防薬を生涯のみ続ける必要があります。これはステントという異物が生体内にあるために起きる問題です。そこで、ステントそのものを消してしまおうとの試みがあり、最近、生体吸ステントが使われ始めました。生体吸収素材でステントを作り、それに再狭窄予防薬をコーティングしています。病変部へはこれまでのステントと同じように配置され、風船で拡張します。ステントも拡張し、再狭窄を防ぎます。再狭窄予防薬をしみこませていますので、内皮細胞の過剰増殖は抑えられます。増殖時期が落ち着いたころには、ステント本体は溶けて吸収されてしまいます。ステント自体がなくなるのでの、遠隔期の血栓形成の可能性は低くなります。使われ始めたばかりなので、狙い通りうまくいくかどうかは未知数です。

    狭窄病変が長く、石灰化が強い場合にはダイアモンドドリルで血管を削ることもあります。ある程度開通した後にステントを留置します。

    上野循環器科・内科医院 上野一弘

  • UP通信 2015/10月号

  • 月報 「聴診器」 2015/10

    月報 「聴診器」 2015/10/01

    今年の9月は大型連休でしたね。イベントがあった方も多かったのではないでしょうか。我が家は久しぶりに家族が集まれたので、たまっていた庭仕事をこなしました。おかげで、しばらく筋肉痛でした。

    20 狭心症2 ④狭心症の治療 薬物

    前回までは、狭心症の検査の話をしていました。さて、狭心症の診断がつけば治療が大事になります。治療は大きく、薬物治療、カテーテルでの治療、バイパス手術と分かれますが、薬物治療はすべての治療の基本であり、他のふたつの治療とも併用します。

    薬物治療の目的は、狭心症症状の緩和と長期予後の改善があります。長期予後の改善のためには動脈硬化進行の抑制と血栓の防止が必要です。動脈硬化進展抑制のために最も大事なのがコレステロールのコントロールです。コレステロールにはHDL-コレステロールという動脈硬化を予防するコレステロールとLDLコレステロールという動脈硬化を進行させるコレステロールがあります。通常はLDLコレステロールの基準は140mg/dlですが、狭心症の患者さんでは100mg/dl以下が推奨されています。研究によっては70mg/dl以下がよいとの報告があり、70mg/dlを目標とすべきだと主張する医師も多いようです。LDLコレステロールを下げる薬は多々ありますが、これまでの研究ではスタチンと呼ばれるグループの薬が一番すぐれているといわれています。余談ですが、この薬の基本は日本人の遠藤先生が発明しています。そのうち、ノーベル賞を受賞するのではないかといわれています。HDLコレステロールは40mg/dl以上がよいといわれています。また。LDLコレステロールとHDLコレステロールの比が1.5以下を目指したほうがいいとも言われます。しかし、HDLコレステロールを上げるのはなかなか難しいことろがあります。以前に海外の製薬会社が「HDLコレステロールを上げる薬」を開発して臨床試験まで行いました。しかし、残念ながら思ったような効果が出らず、販売をあきらめています。おかげで、この会社の株は大幅に下がったそうです。フィブラートという中性脂肪を下げる薬はHDLコレステロールを少し増やす効果があります。どうしても必要なときはこの薬を使用しますが、スタチンとの併用では副作用が強く出たり、腎機能の悪い方には使いにくい面もあります。EPA製剤もややHDLコレステロールを増やす働きがあります。正直なところ効果は微妙なのですが、副作用が少なく使いやすいため人気の薬になっています。

    抗血小板薬はほとんどの症例に使用します。血小板は様々な刺激に反応して凝集し血栓を作ります。抗血小板薬は血小板の機能を抑制して、固まりにくくする薬です。この薬を飲むことで血管が詰まってしまうのを防ぐことができます。

    血管拡張剤はよく使用されますが、必須ではありません。海外のデータでは長期予後を改善する効果はわずかです。しかし、日本人では血管がきゅっと縮むタイプの狭心症を合併しやすいので効果があるといわれています。少なくとも、症状の緩和には有効と思います。

    症例によってはβブロッカーを使用することもあります。βブロッカーは心拍数を落としたり、血圧を下げる効果があります。心臓を休ませる効果もあるので、狭心症の予後を改善する効果があるといわれています。ただし、血管が縮むタイプの狭心症では発作を誘発しやすくなります。

    当然ですが、禁煙は必ずしなければなりません。

    上野循環器科・内科医院 上野一弘

  • UP通信 2015/9月号

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