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  • 月報 「聴診器」 2016/02

    月報 「聴診器」 2016/02/01

    専門医制度の改正にともない、日本内科学会もこれまでの「内科専門医」から「総合内科専門医」に変更することとなりました。数年前から移行処置で試験が行われています。僕は昨年受験しました。久しぶりに内科全般を勉強しなおしてみると、専門外の分野での進歩に驚かされます。試験は無事合格しましたが、今までの不勉強を反省するよい機会となりました。人間、安きに流れやすいものですね。

    21 心筋梗塞2 ①心筋梗塞とは

    前回までは狭心症の話をして来ました。極言すれば、狭心症の診断や治療は心筋梗塞の発症を防ぐことが目的です。狭心症で亡くなってしまう場合はほとんどありませんが、心筋梗塞は今でも10%が急性期に死亡する疾患です。たとえ、急性期を乗り切っても、心機能が低下し、生命予後は悪化してしまいます。

    冠動脈が狭くなってくると、心臓の筋肉を養う血液が不足し、狭心症となります。冠動脈がつまってしまえば、血液が流れなくなり心筋が壊死してしまいます。壊死した部分の心筋は動かなくなってしまいます。これが心筋梗塞です。心臓の壊死は血管が詰まって、だいたい30分後から始まり、8時間ぐらいかけて完成します。最初は小さな範囲の筋肉が死んでしまうのですがそれが徐々に広がっていくのです。その後、壊死した筋肉が取り除かれ、固い繊維に置き換わります。赤身の肉がスジに置き換わるのです。しかし、繊維は筋肉ではありませんから、心筋梗塞になった部分は再び動き出すことはありません。一度、死んでしまった心臓の筋肉は、血行が再開しても元には戻りません。つまり、心筋梗塞を一度起こしてしまえば、完治はしないのです。

    心臓のどの部分の筋肉がどれぐらい壊死するかは、詰まった場所と、再疎通までの時間によって決まります。末梢の血管が詰まり、すぐに再疎通ができた場合は壊死する心筋は少なく、予後もよいといわれています。反対に左前下行枝近位部がつまり、再疎通まで時間がかかったり、詰まったままになっていれば多量の心筋が壊死します。心臓の機能や体全体に与える影響も大きくなり予後は悪くなります。さらに根元の左冠動脈主管部がつまると心臓の3分の2以上が壊死してしまいますので生命の維持が大変困難になります。ここがつまると突然死をすることもあります。

    昔は、心筋梗塞の急性期の死亡率は40%と言われていました。治療法がすすんだ現代でも急性期の死亡率は10%程度と考えられています。心筋梗塞の死亡は急性期に集中しています。発症してすぐは、急激にポンプ機能が落ちるので血行動態が不安定になり血圧が下がってショック状態になることもあります。気を失うことも珍しくはありません。心筋梗塞の範囲が大きかったり、僧房弁閉鎖不全症や心室中隔穿孔などを合併すれば肺がむくんできます。これは肺水腫と呼ばれ呼吸困難を起こします。致死性の不整脈が起きることもよくあります。このため、病院に来る前に亡くなってしまうこともあります。壊死した心筋が破けてしまうこともあります。この場合はほとんど助かりません。

    心筋梗塞を発症すると、激しい胸の痛みを自覚します。痛みはピンポイントではなく、手のひら以上の広さがあり、肩に放散することもあります。冷や汗や恐怖感を伴うことも特徴です。胸の痛みははっきりせず、嘔吐や失神で発症する場合もあります。

    上野循環器科・内科医院 上野一弘

  • 月報 「聴診器」 2016/01

    月報 「聴診器」 2016/01/01

    あけましておめでとうございます。年齢とともに時間のたつのが早くなるといいますが、本当にこの一年はあっという間でした。いくつかの目標は達成でき、成果を残すことができました。一方、未達成のものもあり、また新たな課題もできました。今年も努力を惜しまず前進したいものです。

    20 狭心症2 ⑦狭心症の治療 治療法の比較

    前回まで狭心症の治療を説明してきました。では、どの治療法が優れているのでしょうか。

    日本での狭心症の治療は、カテーテルを使用したものが主流です。カテーテルで狭窄血管を広げると、直後の造影はとてもきれいになります。一方、冠動脈バイパス術は胸に大きな傷が残るし、手術は怖い感じがします。薬物療法だけで狭窄部をそのままにしておくのも不安です。カテーテルでの治療は局所麻酔で行われ、手首に小さな傷ができる程度です。入院期間も2-3日で済みます。同じような効果が得られるならば、冠動脈バイパス術よりもカテーテル治療を選択する人が圧倒的に多数だとおもいます。しかし、カテーテル治療が一番すぐれているわけではありません。

    2007年にCOURAGE研究が発表されました。これは、カナダで行われた狭心症を対象にした臨床試験です。強力な薬物療法を行った患者さんにカテーテル治療を行った症例と行なわなかった症例の長期予後を比較したものです。カテーテル治療を行った群では初期に胸部症状は消失しました。しかし、長期的に見ると心筋梗塞の発生率や生命予後は改善しませんでした。これは、かなりの衝撃をもたらし、それまでのカテーテル治療を見直すきっかけとなりました。まずは、狭窄部位が心筋梗塞を起こすのではないということです。狭い血管を広げても、別の部位にあった不安定プラークの被膜が破けて心筋梗塞を発症してしまうのです。心筋梗塞の予防には、カテーテル治療ではなく薬によるプラークの安定化が必要でした。つぎに、重症度を見た目だけで判断していたことの反省です。それまで、狭い病変をみるとすぐにバルーンやステントで広げていました。しかし、その中には、見た目は狭いけど、血流は減ってない血管も含まれていました。今ではプレッシャーワイヤーや血管内エコーを利用して、本当に血流が減っている血管だけを治療するようにしています。

    以前は多くの病変を持つ症例や、左主幹動脈の症例に対してもカテーテル治療が行われていました。カテーテル治療を行っているグループ内では、より困難な症例を治療することが競われていました。僕にも苦い思い出があります。狭心症の患者さんを総合病院に紹介したところ左主幹動脈を含む複数病変が見つかりました。患者さん本人が手術を希望されず、カテーテル治療を選択されました。しかし、治療中に血管が閉塞し、その患者さんは亡くなってしまいました。

    バイパス術にも手術時の合併症があるのは事実です。しかし、長期予後の改善は認められており、特に複数病変の症例や左主幹動脈の症例ではカテーテルよりも優れています。今ではSYNTAX scoreなど国際的な指標が作られ、カテーテル治療のリスクが高い症例についてはバイパス術を勧めるようになっています。

    カテーテル治療が悪いというわけではありません。特に、心筋梗塞や不安定狭心症など急性期の治療については必要不可欠な治療法です。一方、不必要な治療はしないこと、薬物治療はきちんとおこなうこと、無理な治療はしないことが大切です。それぞれの病変に合わせて、治療法を選択してもらいましょう。

    上野循環器科・内科医院 上野一弘

  • 月報 「聴診器」 2015/12

    月報 「聴診器」 2015/12/01

    今年もあと一か月となりました。早いですね。今年は心臓リハビリテーションの開設というビックイベントがありましたが、皆様のおかげで順調に乗り切ることができました。ありがとうございます。よかったこと、楽しかったことだけ覚えて来年に臨みたいと思います。

    20 狭心症2 ⑥狭心症の治療 冠動脈バイパス術

    狭心症の治療で、薬物治療、カテーテルでの治療と説明してきましたので、今回はバイパス手術の説明になります。バイパス手術は文字通り冠動脈の狭窄部位を迂回(バイパス)して血流を確保する手術です。当初は、足の静脈を摘出し、それをバイパス血管(グラフト)としていました。大動脈に小さな穴をあけ、静脈グラフトを吻合し、逆端を冠動脈に吻合する方法です。その後、内胸動脈を使用する方法も開発されました。内胸動脈は胸壁の前面を走行しており、少し走行を変更するだけで、心臓に近づきます。特に左内胸動脈は冠動脈左前下行枝の近傍を走行しますので、自然のバイパス血管として使用できます。現在では複数のバイパスを行う際には、内胸動脈と静脈グラフトを併用します。冠動脈は三本あり、右冠動脈は心臓の右側、左前下行枝は心臓の前面、左回旋枝は心臓の裏側を走行します。例えば、右冠動脈と左回旋枝には静脈グラフト、左前下行枝には左内胸動脈を使用することが多いようです。右内胸動脈を左前下行枝に、左内胸動脈を左回旋枝に吻合するパターンもあります。まれな例では、手の橈骨動脈を摘出して使用したり、胃の動脈の走行を変えて冠動脈に吻合することもあります。実際にどのようにバイパス血管をデザインするかは、病変部位や吻合予定の血管の走行、病院の考え方で異なります。

    心臓は絶えず動いていますので、そのままではうまく吻合できません。そのため、バイパス手術の際には、心臓を止めて行われます。この間は、人工心肺を使用して体を維持します。手術が終われば、再度心臓を動かし、人工心肺から離脱します。しかし、人工心肺の使用にはいろいろなリスクがあります。人工心肺使用中は、血栓ができやすく脳梗塞などの塞栓症のリスクが増えます。このために抗凝固薬を投与しながら人工心肺を使用しますが、逆に出血が多くなってしまうこともあります。心臓を一回とめますので、弱った心臓では心拍が再開しないこともあります。

    最近では拍動下でも心臓を固定できる特殊な器具が開発されたおかげで、人工心肺を使用しないでバイパス手術ができるようになってきました。オフポンプバイパス手術と呼ばれます。手技的には難しいようですが、手術時間が短時間で済み、合併症も少なく、入院期間も短くて済みます。拍動下で吻合するので、高度な技が必要とされますが、バイパスの開存率は人工心肺下手術と遜色ないようです。オフポンプバイパス術は急激に広まり、今ではバイパス術の約半数がこの術式で行われています。

    さらに、最近でロボットを使用した手術も行われています。完全自動化されたロボットではなく、医師がモニターを見ながら、器具を遠隔操作するものです。開胸はせずに、棒状の器具を胸腔に入れて、内視鏡的に行います。行っている医師は、成功率も高いと発表していますが、危険性を危惧する医師もあります。今のところ、ロボットを使用した冠動脈バイパス術は、保険適応にはなっておらず、行っている病院もわずかです。なお、他の臓器では、ロボット手術が保険適応になっている病気もあります。

    上野循環器科・内科医院 上野一弘

  • 月報 「聴診器」 2015/11

    月報 「聴診器」 2015/11/01

    10月24日と25日に、黒崎で日本心臓リハビリテーション学会九州地方会が行われました。当院でもたびたびお世話になっているJCHO九州病院の折口先生が会長でした。開会式に引き続いてシンポジムが行われ、当院の看護師の那須さんが講演を行いました。診療所での心リハ施設の経験について話してもらいました。とても好評で、大きな拍手をいただきました。

    20 狭心症2 ⑤狭心症の治療 カテーテル治療

    狭心症の治療は、薬物治療、カテーテルでの治療、バイパス手術と分かれますが、現在はカテーテル治療がその主流となっています。

    カテーテル治療は、カテーテルという細い管を血管に挿入して行われます。基本は細い風船を使用することです。診断時に使用したものよりさらに細く、やわらかいガイドワイヤーを使用します。このワイヤーを冠動脈の狭窄部に通過させます。細長い風船をワイヤーに沿わせて病変部に到達させ、風船のなかに造影剤を入れて広げます。圧力をかけて風船を膨らましますので、冠動脈の狭窄部を無理やり広げられます。何回か風船を広げて造影を行い、満足する形になったら風船を抜いて終了です。

    風船治療を行うとしばらくは症状もなく過ごせます。しかし、3割程度では冠動脈が再び狭くなることがわかってきました。そこで登場したのがステントです。ステントは金網でできた細長い筒状の構造物です。先ほどの風船にくっつけて病変部に運ばれます。風船が縮んでいるときはステントも細くなっていますが、風船が広がるとステントも広がります。風船を縮めて抜いた後でも、ステントは金属でできているので、広がったままです。ステントの広がり具合は造影所見で判断することが多いのですが、最近では血管内エコーでステントと血管の密着具合を確認することも多いようです。ステント導入で再狭窄率は2割程度に改善しました。

    それでも再狭窄はありましたので、薬剤コーティングステントが登場しました。再狭窄は冠動脈内皮の過剰増殖が主体といわれています。その増殖を抑える薬剤をステントにしみこませたものです。この新しいステントによって再狭窄は1割を切るようになりました。薬剤コーティングステントが出た当初は血栓や通過性の問題がありましたが、改良を重ねられています。

    それでも、すべての症例で再狭窄がないわけでもありません。血栓についても依然大きな問題で、ステントを入れた方は、血栓予防薬を生涯のみ続ける必要があります。これはステントという異物が生体内にあるために起きる問題です。そこで、ステントそのものを消してしまおうとの試みがあり、最近、生体吸ステントが使われ始めました。生体吸収素材でステントを作り、それに再狭窄予防薬をコーティングしています。病変部へはこれまでのステントと同じように配置され、風船で拡張します。ステントも拡張し、再狭窄を防ぎます。再狭窄予防薬をしみこませていますので、内皮細胞の過剰増殖は抑えられます。増殖時期が落ち着いたころには、ステント本体は溶けて吸収されてしまいます。ステント自体がなくなるのでの、遠隔期の血栓形成の可能性は低くなります。使われ始めたばかりなので、狙い通りうまくいくかどうかは未知数です。

    狭窄病変が長く、石灰化が強い場合にはダイアモンドドリルで血管を削ることもあります。ある程度開通した後にステントを留置します。

    上野循環器科・内科医院 上野一弘

  • 月報 「聴診器」 2015/10

    月報 「聴診器」 2015/10/01

    今年の9月は大型連休でしたね。イベントがあった方も多かったのではないでしょうか。我が家は久しぶりに家族が集まれたので、たまっていた庭仕事をこなしました。おかげで、しばらく筋肉痛でした。

    20 狭心症2 ④狭心症の治療 薬物

    前回までは、狭心症の検査の話をしていました。さて、狭心症の診断がつけば治療が大事になります。治療は大きく、薬物治療、カテーテルでの治療、バイパス手術と分かれますが、薬物治療はすべての治療の基本であり、他のふたつの治療とも併用します。

    薬物治療の目的は、狭心症症状の緩和と長期予後の改善があります。長期予後の改善のためには動脈硬化進行の抑制と血栓の防止が必要です。動脈硬化進展抑制のために最も大事なのがコレステロールのコントロールです。コレステロールにはHDL-コレステロールという動脈硬化を予防するコレステロールとLDLコレステロールという動脈硬化を進行させるコレステロールがあります。通常はLDLコレステロールの基準は140mg/dlですが、狭心症の患者さんでは100mg/dl以下が推奨されています。研究によっては70mg/dl以下がよいとの報告があり、70mg/dlを目標とすべきだと主張する医師も多いようです。LDLコレステロールを下げる薬は多々ありますが、これまでの研究ではスタチンと呼ばれるグループの薬が一番すぐれているといわれています。余談ですが、この薬の基本は日本人の遠藤先生が発明しています。そのうち、ノーベル賞を受賞するのではないかといわれています。HDLコレステロールは40mg/dl以上がよいといわれています。また。LDLコレステロールとHDLコレステロールの比が1.5以下を目指したほうがいいとも言われます。しかし、HDLコレステロールを上げるのはなかなか難しいことろがあります。以前に海外の製薬会社が「HDLコレステロールを上げる薬」を開発して臨床試験まで行いました。しかし、残念ながら思ったような効果が出らず、販売をあきらめています。おかげで、この会社の株は大幅に下がったそうです。フィブラートという中性脂肪を下げる薬はHDLコレステロールを少し増やす効果があります。どうしても必要なときはこの薬を使用しますが、スタチンとの併用では副作用が強く出たり、腎機能の悪い方には使いにくい面もあります。EPA製剤もややHDLコレステロールを増やす働きがあります。正直なところ効果は微妙なのですが、副作用が少なく使いやすいため人気の薬になっています。

    抗血小板薬はほとんどの症例に使用します。血小板は様々な刺激に反応して凝集し血栓を作ります。抗血小板薬は血小板の機能を抑制して、固まりにくくする薬です。この薬を飲むことで血管が詰まってしまうのを防ぐことができます。

    血管拡張剤はよく使用されますが、必須ではありません。海外のデータでは長期予後を改善する効果はわずかです。しかし、日本人では血管がきゅっと縮むタイプの狭心症を合併しやすいので効果があるといわれています。少なくとも、症状の緩和には有効と思います。

    症例によってはβブロッカーを使用することもあります。βブロッカーは心拍数を落としたり、血圧を下げる効果があります。心臓を休ませる効果もあるので、狭心症の予後を改善する効果があるといわれています。ただし、血管が縮むタイプの狭心症では発作を誘発しやすくなります。

    当然ですが、禁煙は必ずしなければなりません。

    上野循環器科・内科医院 上野一弘

  • 月報 「聴診器」 2015/09

    月報 「聴診器」 2015/09/01

    厚い8月もやっと終わりました。今年は、例年になく熱中症が多かった印象です。月末には台風も来ましたが、被害などはありませんでしたか?残暑は少しおだやかになるといいですね。

    20 狭心症2 ③狭心症の検査 カテーテル検査

    今回はカテーテル検査の話です。カテーテルとは細い管のことです。医療では、体内に薬を投与したり、尿を出すときなどに使用します。心臓の検査で使用するカテーテルは専用のものを使用します。管を通して心臓の圧力を測ったり心拍出量を測定するものや、血管造影を行うものがあります。狭心症では主に血管造影用のカテーテルを使用します。

    冠動脈はそのままではレントゲンには写りません。そこで、レントゲンに写る薬を冠動脈に注入する必要があります。まず、手首の動脈からシースというカテーテルを挿入しやすい短めの「さや」を入れます。そして、シースの中からカテーテルを挿入し、血管に沿わせて心臓まで進めていきます。この際には、ガイドワイヤーというやわらかい線を先に進ませて、慎重に操作する必要があります。心臓までカテーテルを進めて、冠動脈の入口近くになれば、ガイドワイヤーを引き抜いて造影剤の入った注射器のようなものを接続します。ここで、空気が入ってしまうと冠動脈に空気がつまってしまいます。きちんと手順を踏んで空気を抜かなければなりません。カテーテルを操作して冠動脈に挿入して、造影剤を流します。この時、同時にレントゲンで撮影しながら動画を記録します。冠動脈は立体構造をしているので、様々な方向から撮影しないと正確な病態がわかりません。そのため、撮影の装置をぐるぐる回して同じことを繰り返します。だいたい、右冠動脈で2ショット、左冠動脈で4ショットほど撮影をします。撮影が終わると、カテーテルを抜いて、シースも抜きます。シースを抜くと1mm程度の穴が動脈に開きます。そのままでは、血がぴゅーぴゅー吹き出しますので、圧迫して止血する必要があります。

    昔は、シースもなく動脈を切開してカテーテルを入れていたそうです。カテーテルも太くて操作がしにくく大変だったと聞いています。真っ直ぐの形状しかなかったので冠動脈に挿入するのもかなりのテクニックが必要だったそうです。いまは、カテーテルは細くなり、操作はしやすくなっています。冠動脈に挿入しやすい形があらかじめつけられていますので、格段に挿入しやすくなっています。挿入部位も昔は太ももの付け根が主流でしたが、今はほとんどが手首からになっています。右の手首から挿入するか左の手首から挿入するかは、病院ごとに考えがあり、決まっていません。動画の記録は昔はフィルムでしたが、今では当然デジタルです。

    以前は、冠動脈造影の動画を見て、狭い部位を視覚的に判断していました。最近では血管内エコーを行うことが多いようです。非常に細い超音波検査装置を冠動脈内に挿入して、血管の断面図を記録する方法です。この方法では、冠動脈のプラークの性状や狭窄率を正確に判断することができます。プレッシャー・ワイヤーを使用する方法もあります。カテーテルの中から、冠動脈に圧力測定装置を挿入します。狭窄が高度ならば、狭窄部位よりも末梢では冠動脈圧が低下します。冠動脈入口部の圧力を1.0としたとき、狭窄部位より末梢0.75以下であれば高度狭窄と判断します。視覚的な判断は今でも主流ですが、新しい測定法ではより正確に高度狭窄部位を判断できます。これらの方法を併用することで、質の高い治療ができるようになっています。

    上野循環器科・内科医院 上野一弘

  • 月報 「聴診器」 2015/08

    月報 「聴診器」 2015/08/01

    急に暑くなりました。7月からこんなに暑くなったのは久しぶりかもしれません。熱中症指数でみると19日以降はほぼ連日30程度を記録していました。確か6月ぐらいには「エルニーニョ現象で冷夏になるかも」といわれていたような 気がします。どうなっちゃたんでしょうか。

    20 狭心症2 ①狭心症の検査

    前回から狭心症の話を書いています。狭心症は心臓の血管が細くなって胸が苦しくなる病気です。狭心症を疑った場合には心電図、レントゲン写真、心エコーを行います。ただし、狭心症では非発作時には心電図変化はありません。非発作時は心臓の動きも正常なので心エコーでも異常は見つかりません。これらの検査の意味は、心筋梗塞や心不全などの除外が主な目的になります。

    発作が労作時に起きる方は、運動負荷検査が有効です。運動をして発作を誘発し、この時の所見を観察する方法です。例えば、運動負荷心電図では、エアロサイクルをこぎながら心電図をとります。狭心症が誘発されれば、心電図変化を認めることができます。心筋の血流不足が起きれば、心内膜側と外膜側での再分極過程にずれが生じて、ST部分の低下が出現します。また、心筋が血流不足になれば不整脈が起きやすくなります。運動負荷で増加する不整脈は狭心症の傍証と考えられています。運動負荷心エコーでは、発作時に心臓の動きの悪化を観察することができます。血流不足の心筋では十分な収縮ができないためです。運動負荷心筋シンチでは、運動中に血流が悪化している所見が見られます。心筋シンチは放射性同位元素を投与して、心筋に取り込ませる検査です。

    運動ではなく、薬物を使用して発作を誘発する方法もあります。ドブタミンという薬では運動したのと同じような状態を作り出すことができます。ドブタミンは主に負荷心エコー検査で使用されます。ジピリダモールという薬は血管を開く薬です。しかし、正常血管しか拡張せず、動脈硬化病変の強い血管は拡張しません。相対的に狭窄部位のある心筋が血流不足になります。ジピリダモールは主に負荷心筋シンチで使用されます。

    冠攣縮性狭心症ではこれらの負荷では発作が誘発されません。一番良いのは自然発作時に心電図を記録する方法です。患者さんに入院してもらって、発作が起きたら教えてもらい心電図をとります。しかし、この方法では発作が起きるまでずっと入院をしてもらわなくてはいけません。負荷試験で冠攣縮性狭心症を誘発する方法もあります。過換気負荷や冷水負荷で発作が誘発される場合があります。飲酒後に発作が起きる症例ではアルコール負荷を行う場合もあります。

    狭心症が強く疑われれば、冠動脈の検査をします。以前は、この段階でカテーテル検査を行うのが一般的でした。この10年でCTスキャンの技術が大きく進歩し、今ではまず冠動脈CTを行うのが一般的になりました。CTスキャンは放射線を使用して体の断面を画像化できる検査です。このスライスを薄くして重ねていくと3次元に再構成することができます。造影剤を使用して、三次元構成を行うと、冠動脈の走行がわかります。以前はスライスが厚く、一度にとれるのは16スライスがせいぜいでした。そのため、呼吸や心拍数の影響で、再構成した冠動脈が凸凹になってしまいました。今では0.5mm厚のスライスが320枚、一度にとれます。おかげで、再構成した冠動脈画像はリアルで、スクリーニング検査には十分な精度です。

    血管の狭窄が強く疑われたら、カテーテル検査を行います。(続く)

    上野循環器科・内科医院 上野一弘

  • 月報 「聴診器」 2015/07

    月報 「聴診器」 2015/07/01

    先日、弟がテレビに出ました。夕方の情報番組、ももち浜ストアの「福岡ケンジンを探せ」というコーナーです。弟は石川県輪島で漆器の職人をしています。漆器に細く溝を掘り、金を埋め込んで模様を描く工程です。小さいころから絵をかくのが好きで、たどり着いた仕事でした。いろいろ、苦労は多いようですが、しっかり頑張っているようです。

    20 狭心症2 ①狭心症とは

    前回、この「聴診器」で狭心症の話を書いたのは、11年前でした。月日が経つのは早いですね!!

    狭心症は心臓の代表的な病気です。普段はどうもなくても、発作が出ると胸が苦しくなる病気です。典型的には、階段や坂道を上ると左胸が漠然と苦しくなり、冷や汗を伴います。狭心症の症状はバリエーションが多く、「歯が浮く感じがする。」「胃が痛い」「左手がしびれる」などの症状で発症する場合もあります。発作の出るときも、労作時だけでなく、夜間や早朝安静時に出る場合もあります。

    心臓は体中に血液を送っている大切な臓器です。心臓が止まってしまえば生命を維持することができず、死亡します。心臓は筋肉でできた袋になっており、筋肉が収縮すると袋が小さくなって、血液を押し出します。心臓の筋肉が動くためには酸素や栄養が必要です。そのために、心筋を養う血管があります。これが冠動脈です。冠動脈は右に一本、左に二本あり、カンムリのように心臓を取り囲んでいます。冠動脈は、大動脈が心臓を出てすぐの場所から分枝します。右の一本と、左に二本と述べましたが、左の二本は一つ穴から始まり、左主幹動脈を経由して二本に分かれます。つまり、左主幹動脈は心臓の3分の2を養っていることになります。この冠動脈がつまってしまえば、心臓の筋肉は死んでしまいます。これが心筋梗塞です。冠動脈が狭くなって、血流が乏しくなると狭心症になります。安静時は心臓もたくさんは働きませんので必要とする酸素もすくなくてすみます。乏しい血流でも十分まかなえます。しかし、坂道をのぼるなどの労作がかかると、心臓もたくさん働かねばならなくなり、多くの酸素を必要とします。乏しい血流では、この時の需要をまかなえませんので、心臓が苦しくなります。これが狭心症です。

    血管が狭くなる原因のほとんどは動脈硬化です。動脈硬化が進むと血管がつまったり、細くなったりします。高コレステロール、高血圧、糖尿病、喫煙など動脈硬化を進行させる病気は狭心症や心筋梗塞の原因となります。しかし、動脈硬化がそれほどなくても、狭心症が起こる場合があります。血管のけいれんによる狭心症です。

    血管はただの管ではなく細胞と筋肉でできた臓器です。必要に応じで拡張したり収縮するようにできています。冠動脈の拡張や収縮は血管内皮細胞と自律神経によって調節されています。加齢や喫煙などの影響で、この調節機能が障害されると、何かのはずみで血管が異常に収縮します。場合によってはほとんど詰まったようになり、安静時でも胸が痛くなります。これは、冠攣縮性狭心症と呼ばれます。とくに、自律神経が不安定になる早朝に発作が多いことが知られています。このタイプの狭心症ではニトロなどの血管拡張剤が非常に有効です。

    余談ですが、ニトロは、狭心症以外には効きません。不整脈や、喘息などには無効ですので、なんにでもニトロを欲しがらないようにしてください。

    上野循環器科・内科医院 上野一弘

  • 月報 「聴診器」 2015/06

    月報 「聴診器」 2015/06/01

    皆さんは「本屋大賞」をご存知でしょうか?全国の本屋さんが面白いと思った本を投票で決める賞です。今年の本屋大賞は上橋菜穂子さんの「鹿の王」でしたね。「鹿の王」は架空の国での部族抗争の話ですが、感染症と医療が重要な位置を占めています。医学的考察はかなりしっかりしていて、免疫学的説明も非常に優れています。このため、日本医師会が主催する日本医療小説大賞も受賞しました。先日の朝刊には日本医師会の横倉会長と上橋さんとの会談も乗っていたのでご覧になった方も多いと思います。ファンタジー小説なので子供から大人まで楽しめると思いますよ。

    19 心臓リハビリテーション③ 心臓リハビリテーションの実際

    心臓リハビリテーションは、予後の改善や入院の減少に効果があります。ただし、やみくもに運動をすればよいということではありません。やりすぎはかえって危険性が増すこともあります。心臓リハビリテーションでは運動自体に特殊な体操や器具を使用することはありませんが、有酸素運動を行うことが重要になります。有酸素運動の中身はエルゴメーターでもいいし、歩行でもダンスでも構いません。有酸素運動についいては2月の「聴診器」で触れました。体の組織への酸素供給量に見合った運動量のことで、体によけない負担をかけない運動強度です。有酸素運動の運動強度の指標には心拍がよくつかわれます。年齢に応じた最大心拍数の60%程度の心拍数を目安にするとよいといわれています。よく使用されている式では、(220-年齢)x 0.6で有酸素運動時の目標心拍数が割り出されます。しかし、心疾患のある方では事情が異なります。正常な場合は運動とすると心拍数が上昇するとともに一回ずつの心拍出量が増加します。このため、一分当たりの心拍出量は速やかに増やされます。しかし、心疾患のある方では、一回ずつの心拍出量が落ちていることがあります。このため、心拍数があがってもすぐに一分間あたりの心拍出量は上がりません。また、不整脈があったり、ペースメーカー調律になったりしているせいで、心拍数による指標そのものが役に立たない場合があります。薬の影響で運動しても心拍数が上がらなくなっている場合もあります。このため、専門施設では心肺負荷装置という特殊な機械を使用して有酸素運動を計測しています。

    有酸素運動中は、体に酸素分子一つが取り込まれると、二酸化炭素分子が一つ吐き出されます。吸気時と呼気時の酸素と二酸化炭素の測定を行えば、すった酸素の量と吐いた酸素の量から摂取した酸素量がわかります。吐いた二酸化炭素の量もわかります。心肺負荷検査では、測定器の付いたマスクをはめてもらったまま運動をしてもらい、運動強度を徐々に強くしていきます。最初は有酸素運動が行われているので、酸素摂取量と二酸化炭素排出量は同じです。ところが、運動強度が強くなると無酸素運動の代謝領域に達してくるので、二酸化炭素の排出量が酸素摂取量よりも増えてきます。この時点の、運動強度や心拍数を記録して「無酸素運動閾値(AT)」とします。限界まで運動してもらった時点の酸素摂取量が「最大酸素摂取量」で、その人の潜在的な体力を表しています。心臓リハビリテーションでは、このATを超えない強度で運動をしてもらうようにしています。

    実際の運動中には安全を確保することが大事になります。医学知識のあるスタッフによる事前のチェックをおこない、運動中は心電図モニターを付けることが必要です。運動中に心拍数が上がりすぎないか、危険な不整脈が出ないかを見るためです。心臓リハビリテーションでは、週に1-3回、一回30分程度の運動をおこなうと効果があるといいます。一番大切なのは、運動療法を続ける気持ちだと思います。

    上野循環器科・内科医院 上野一弘

  • 月報 「聴診器」 2015/05

    月報 「聴診器」 2015/05/01

    心臓リハビリテーション施設が稼働して一か月がたちました。予想よりも多くの方にご利用いただき、順調なスタートを切ることができています。利用されている方からは「楽しい」「体が動くようになった。」との声があり、大変うれしく思っています。ところで、マスコットマークはご存知でしょうか?これは、「アップ君」という名前で看護師さん手作りのキャラクターです。みんなでいろいろなマークを考えましたが、親しみやすくかわいらしいとの理由で、「アップ君」をマスコットキャラクターにすることとしました。皆さんと一緒に運動をがんばって、つらいときには励ましてくれるそうです。

    19 心臓リハビリテーション② 心不全の運動療法効果

    近年、心臓リハビリテーションの効果が注目されています。これは、心不全や心筋梗塞の治療の進歩とともに出てきた動きです。心不全は心臓の動きが衰え、体の需要に追いつかなくなっている状態です。心臓の動きが悪化すれば、十分な血液を体に送ることができなくなり、すぐに息切れがしたり、体がむくんだりします。入院治療を要するような心不全では予後は悪く、5年生存率が50%を切っていました。これは、がんの予後よりも悪い数字です。このため、心不全の治療が長年研究されてきました。当初は、強心剤など心臓の動きをよくする薬に期待がかけられていましたが、これらの薬はことごとく予後を悪化させました。薬を投与した患者さんのほうが早く亡くなってしまったのです。その後、心臓の負担をとるような薬で予後が改善することがわかってきました。今では、アンギオテンシン阻害薬、アルドステロン拮抗薬、βブロッカーなどが心不全の予後を改善することが確かめられています。これらの薬は重症心不全治療には必須となっており、世界中の心不全治療ガイドラインに組み込まれています。しかし、その後に期待されて薬や治療法ではさらなる改善効果は得られませんでした。2004年前後に運動療法が心不全の予後を改善するとの研究結果が発表されました。心不全を有する患者さんに、定期に有酸素運動をしてもらうと、入院が20%も減り、生命予後も改善するとの事でした。この数字は、薬物療法に匹敵するもので大きな驚きをもたらしました。それまでは、リハビリはあくまで日常生活までの復帰をサポートするものでしたが、治療として認識されだしたのです。その後の追試でも同様の効果が確かめられ、今はでは運動療法も治療ガイドラインで推奨されています。

    心臓リハビリテーションがなぜ有効なのかはさまざまな検討がされています。まずは直接的に筋肉が増える事です。心不全患者では適切な労作がおこなわれず、骨格筋や呼吸器筋が減っていきます。このためにますます、軽労作での息苦しさが強くなり、さらに活動性が低下してしまいます。最近では、高齢者や心不全患者でも適切なトレーニングで筋力が増加することがわかっています。また、心不全患者では、運動時に血管が収縮しすぎて骨格筋血流が乏しくなり、さらに心臓の負担が増してしまいます。これも運動を続けると血管内機能が改善され、血管拡張療法と同じような効果をもたらすのであろうと考えられています。自律神経についても、運動療法で交感神経が抑制され副交感神経が優位になることが、わかっています。これは、βブロッカーと同じような効果があることを意味します。個々の病態にもよりますが、これらの複合した機序で、予後の改善効果をもたらすのでしょう。

    上野循環器科・内科医院 上野一弘

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