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  • 月報 「聴診器」 2015/04

    月報 「聴診器」 2015/04/01

    いよいよ心臓リハビリテーション施設が稼働しました。内覧会には多数の方に来ていただきありがとうございました。心臓リハビリテーション施設はJCHO九州病院の折口先生との出会が始まりでした。折口先生は心臓リハビリテーションの泰斗で、全国的にも有名な先生です。偶然にも宗像にお住まいで、親しくさせてもらっています。その折口先生から、地域で利用できる心臓リハビリテーション施設がほとんどなく、多くの患者さんがリハビリ難民になっている現状を教えていただきました。わたくしも微力ながら、地域社会に貢献し、社会をよりよくしたいと考え、施設を作ることを決心しました。

    無事にスタートの日が迎えられたことに安堵しています。これも、日頃当院の活動を支えていただいた皆様のおかげと心から感謝しています。今後ともよろしくお願い申し上げます。

    19 心臓リハビリテーション ①これまでの心臓リハビリテーション

    前回まで生活習慣について説明してきました。特に最後の方は生活習慣病に対する運動療法について説明をしました。、今回からは心臓リハビリテーションについて説明していきます。

    そもそも「心臓リハビリテーション」は心筋梗塞を起こした患者さんが日常生活に復帰するために行うものでした。昔は、心筋梗塞を起こした患者さんに対する最大の治療は絶対安静でした。心筋梗塞を起こしたばかりの時には心筋がやわらかく不安定です。壊死したばかりの心筋はやわらかいため負荷をかけると破裂する恐れがあります。不整脈も出現しやすく、少しの労作でも心室頻拍や心室細動が起きてしまいます。急激に心臓のポンプ機能が低下しているので、心不全も起こしやすくなります。複数の血管に狭窄があれば、再度心筋梗塞を起こすこともあります。これらは、致死性の合併症であり、心筋梗塞急性期にいきなり体を動かすと生命の危険にさらされます。今は、治療法が進化し、急性期にカテーテルで血行再建術を行うことが一般的なっていますが、それでも、梗塞範囲が大きければ当初は絶対安静が必要です。一日目は絶対安静で食事や排せつもベッド上で行います。二日目はベッドを30度までギャッジアップでき、3日目はベッド上に座って食事をとるようになります。4日目からは立つことが許され、ポータブルトイレが使用できます。5日目からは少しずつ歩行をしてもらいます。各病院で少しずつマニュアルが異なりますが、どこでもこのような段階を踏んで、絶対安静から徐々に行動範囲を広げていきます。そして、ステップアップするごとに心電図をモニターし、自覚症状と血圧もチェックします。一つでもクリアできない問題、例えば血圧が下がるとか不整脈が出るとかがあれば、ステップアップは延期になります。順調にリハビリが進めば、2週間程度で日常生活レベルまで行動範囲を広げ、退院の準備をします。心筋梗塞だけでなく、心不全や心臓手術のときにも、それぞれにマニュアルがあり、行動範囲のステップアップメニューが決まっています。

    近年は治療の進歩もあり、リハビリのスピードが上がってきています。進んだ施設では、補助人工心肺を付けながらもトレーニングを行っています。これは、治療法の進歩だけでなく、心臓リハビリテーションに対する考え方が変わってきたことも影響しています。以前は、心臓リハビリテーションは、単に日常生活復帰まで徐々に体を慣らしていくことを目的としていました。しかし、最近は、適切なトレーニングが心疾患の予後を改善することがわかってきています。

    上野循環器科・内科医院 上野一弘

  • 月報 「聴診器」 2015/03

    月報 「聴診器」 2015/03/01

    心臓リハビリテーション施設の工事がやっと終わりました。皆様には長い間ご迷惑をおかけしました。心臓リハビリテーション施設は、心疾患のある患者さんに効果的に安全に運動をしてもらう施設です。心疾患に対する運動療法は優れた治療効果があり、標準治療として推奨されています。しかし、大きな病院にしか専用施設がなく、地域での継続が課題でした。残念ながら、診療所で心臓リハビリテーション施設を有するところはごくわずかしかありません。

    多くの方に快適に運動療法に取り組んでいただくために、基準の4倍の広さを用意しました。4月の稼働を目指して、スタッフ一同で着々と準備を進めています。3月下旬には内覧会も準備しています。冷やかしで結構ですので、是非見に来てください。

    18 生活習慣 ⑫有酸素運動の効果

    前回は運動には有酸素運動と無酸素運動があることを説明しました。有酸素運動は酸素と栄養が供給され続ければ、長時間運動を続けることが可能です。いわゆる「ニコニコペース」というやつです。長時間続けることで、持久力の向上や、生活習慣病の改善が期待できます。

    まず、確実に得られるのがダイエット効果です。運動開始当初は糖分が主に栄養分として使われますが、10-20分を過ぎると脂肪が栄養源となります。一日30分以上の有酸素運動を続ければ、脂肪が消費され、体重を減らすことができます。

    生活習慣病の改善は、主にインスリン抵抗性の改善を通して得られます。筋肉はインスリンに反応して糖分を取り込みます。糖尿病や糖尿病予備軍ではインスリンに対する筋肉の反応が弱まっており、この状態を「インスリン抵抗状態」と呼びます。インスリン抵抗状態では、通常のインスリン量では筋肉が糖分を取り込めなくなっています。そこで、すい臓が無理に多量のインスリンを分泌して、とりあえず血糖値を下げるようになっています。最初は、すい臓が無理をし続けられますが、いつかは疲れ果ててしまいます。そうなれば、血糖値を下げることができずに糖尿病を発症するようになります。インスリン抵抗状態は糖尿病だけでなく、高血圧や高脂血症の原因にもなっています。運動不足や、アルコール、食べ過ぎによりインスリン抵抗状態となってしまいます。一方、長時間の有酸素運動を続けることでインスリン抵抗性が改善することがわかっています。糖尿病には長時間の有酸素運動を勧めますが、運動自体によるカロリー消費効果よりも、実はインスリン抵抗性改善がターゲットです。インスリン抵抗性改善により持続しての血糖降下作用が得られるのです。

    自律神経には、心拍をあげて血圧を上げる交感神経と、心拍を下げて血圧を下げる副交感神経があります。両者のバランスによって体の機能は制御されています。両方とも大切な神経ですが、交感神経が優位になりすぎると、血圧が上がったり、体調不良の原因になったりします。心疾患のある患者さんでは、交感神経優位状態は不整脈や心不全の原因になったりします。有酸素運動中は、無酸素運動と比べて交感神経の緊張度合いが低いことがわかっています。また、定期的に有酸素運動を続けることで副交感神経優位な体質に変化し、心臓が長持ちをするようになります。

    ほかにも、有酸素運動には、血流の改善、心拍出量増加、認知機能の改善、がんの発生予防の効果も期待されています。

    上野循環器科・内科医院 上野一弘

  • 月報 「聴診器」 2015/02

    月報 「聴診器」 2015/02/01

    インフルエンザが大流行しています。現時点での感染者数は、2009-2010年に次ぐものとなっています。もっとも、2009-2010年はインフルエンザH1N1型が「新型インフルエンザ」として大流行した年でした。今回は通常のA型インフルエンザ(H3)が多いようです。例年、インフルエンザ流行のピークは毎年2月ごろですが、今季はピークが早く来ただけなのか、今後さらに増えるのかは不明です。とにかく、手洗いやマスクで感染予防をしましょう。

    一般的にはインフルエンザは自然軽快する病気です。抗インフルエンザ薬を使用しなくても治癒します。報道では、重症例や死亡例が取り上げられますが、感染者数に比べると死亡率が高いとは言えません。持病のない人や若年者の方は過度に怖がることはないと思います。

    一方、高齢者や心疾患を持つ人は重症化しやすいことがわかっています。このような方は、早めに抗インフルエンザを投与するようにしています。保険適応ではありませんが、予防投与をする場合もあります。

    18 生活習慣 ⑫運動の種類

    運動不足が様々な弊害をもたらすことはたびたび言われています。そのため、運動習慣を積極的に取り入れている方も多くなっています。ただし、運動にはいくつかの種類があり、それぞれに特性があります。特に、生活習慣病の改善や認知症の予防には有酸素運動がよいとされています。よく耳にする「エアロビクス」は有酸素運動の意味です。

    体を動かすことは、筋肉を動かすことです。筋肉を動かすためにはエネルギーを作らなければなりません。エネルギーは脂肪や糖分から作られ、ATPという形で運ばれます。糖からATPを産生するときに酸素を利用しない場合と酸素を利用する場合があります。酸素を利用しない場合は、嫌気性代謝と呼ばれます。酵母が糖分を分解してアルコールを作るのも一種の嫌気性代謝です。一つのブドウ糖から嫌気性代謝では2個のATPが産生されます。酸素を利用する場合は好気性代謝とよばれ、一つのブドウ糖から36個のATPを作ることができます。好気性代謝では嫌気性代謝の18倍ものエネルギーを産生することができるのです。人の体の中ではこの二種類の代謝が起きています。運動強度が弱く、酸素を十分に取り込めて血液が豊富にある場合は好気性代謝が行われます。この時点での運動が有酸素運動と呼ばれます。運動強度が上がり、酸素供給量を上回ると嫌気性代謝が行われます。全身の筋肉は均等に負荷がかかり、一様に酸素が供給されているわけではありませんので、ある筋肉は好気性代謝の段階だけど別の筋肉は嫌気性代謝の段階だったりします。それぞれを正確に計測することは困難ですので、大部分の筋肉が嫌気性代謝をしている段階を有酸素運動としています。有酸素運動を10分以上続けていると、脂肪もアシルCoAの段階を介して、好気性代謝と同じように消費されます。散歩やゆっくりとしたジョギングが有酸素運動に当たります。エ

    有酸素運動からさらに運動負荷をあげてくると嫌気性代謝の割合が多くなってきます。この段階を無酸素運動と呼びます。ただし、好気性代謝が完全に無くなるわけではありません。負荷がさらに進むと、乳酸が多くなり、血液が酸性になりかかります。これを代償するために、激しく息をして二酸化炭素を排出するようになります。無酸素運動の段階では脂肪はあまり消費されず、糖が主なエネルギー源となります。筋肉トレーニングや短距離ダッシュが無酸素運動に当たります。

    上野循環器科・内科医院 上野一弘

  • 月報 「聴診器」 2015/01

    月報 「聴診器」 2015/01/01

    皆様、明けましておめでとうございます。昨年末は、暖冬の予想を書いていましたが、見事に外れましたね。12月に雪は降るし、インフルエンザは流行るし、で皆さんも大変だったんじゃないでしょうか?

    当院は、今年の4月に心臓リハビリテーション施設の稼働を予定しています。現在、診療棟となりで工事中です。着々と完成に近づいていますが、窓にステンドグラスが4つあるのにお気づきでしょうか。これは、看護師の那須さんの手作りです。何か記念になるようなものがほしくてお願いをしました。かなり苦労を掛けましたが、美しく心のこもったものを作ってくれて、大変感激しました。建物に魂が宿った気がします。

    18 生活習慣 ⑪運動不足と老化

    前回まで運動不足が様々な病気を引き起こすことを説明してきました。糖尿病、高脂血症、高血圧、心筋梗塞、脳梗塞、骨粗鬆症、認知症などです。ほかにも、がんやうつ病になりやすい、皮膚のたるみやしわが増える、感染症に弱くなるなどの報告もあるようです。つまり、運動不足は老化を促進させると考えられています。逆に言えば、運動習慣を取り入れることで老化を遅らせることができるかもしれません。

    老化に伴い体力は低下していきます。様々な指標で若年者と高齢者を比較すると、下肢の筋力と持久力の低下が目立ちます。片足立ちや、脚筋力では、60歳で50%以下に低下します。このことから「人は脚から老いる」とも表現されます。持久力とは最大酸素摂取量と考えてよいと思います。体は酸素を利用してエネルギーを生み出し活動をしています。酸素を利用できる能力が高いほどたくさんのエネルギーを生み出すことができます。酸素はまず肺から吸収され、血液にとりこまれます。酸素を取り込んだ血液は心臓によって押し出されて全身に運ばれます。そこで、主に筋肉に酸素は取り込まれてエネルギーを生み出しています。運動をすればたくさんエネルギーが必要となりますので、酸素摂取量も増加していきます。限界まで運動を行ったときが、その人のエネルギー産生の力の限界で、この時の酸素摂取量が最大酸素摂取量と呼ばれています。つまり、最大酸素摂取量とはその人のエネルギー産生能力を表している指標になります。酸素利用は、肺>>血液>>心臓>>筋肉と流れますので、これらの要因に問題があれば最大酸素摂取量は低下してしまいます。例えば喘息の発作時は少し歩いても疲労してしまいます。これは肺で酸素を取り込むことができなくなっているからです。貧血や心臓病があっても最大酸素摂取量は低下してしまいます。ただし、老化による最大酸素摂取量の低下は、筋肉量の減少が一番大きな要因といわれています。

    高齢になれば、筋力が衰え、最大酸素摂取量が低下するのは仕方ないことでしょうか。多くの人が、高齢になれば筋力トレーニングの効果はなく逆に有害である、と誤解しています。確かに、若年者のように筋トレでマッチョになることはありませんし、やみくもなトレーニングは危険を伴います。しかし、適度なトレーニングを行えば、高齢者でも効果が出ることがわかっています。例えば60歳から走行トレーニングを開始したグループの調査では、同年代と比べて30%も最大酸素摂取量が増加しています。トレーニングを続けた例では、75歳でも40代の体力を維持できたとの報告もあります。アメリカの研究でも60歳からトレーニングを開始した場合に体力の向上と死亡率の低下がみられています。             上野循環器科・内科医院 上野一弘

  • 月報 「聴診器」 2014/12

    月報 「聴診器」 2014/12/01

    天気予報では今年の冬は比較的暖かだそうです。僕は寒いのが苦手なのでほっとしています。天気予報が当たればいいですね。今年もそろそろ終わりを迎えます。いろんなことがあった一年でしたが、皆様にとってはいかがだったでしょうか?僕は、よかったこと、悪かったことがありましたが、よかったことだけを覚えておくつもりです。

    18 生活習慣 ⑩運動不足と病気 認知症など

    認知症は病型が多数あり、その原因も複合的といわれています。認知症を引き起こす単一の原因を特定することは困難です。しかし、運動不足も原因の一つかもしれません。

    認知症の病型では脳血管性認知症とアルツハイマー型認知症が多くを占めています。脳血管性認知症は脳の血流が低下し脳細胞が死滅することで引き起こされる認知症です。おおざっぱに言えば、脳梗塞による認知症ととらえてもらってよいと思います。脳梗塞の原因は脳の血管自体が原因のものと、心臓が原因でおこるものがあります。前者は血管の動脈硬化が進んだ結果起こってしまう脳梗塞です。動脈硬化が進めば、血管が細くなり、少しのはずみで血管が詰まってしまいます。血管が詰まると脳細胞に栄養や酸素が供給されず、脳細胞が死滅してしまいます。死んだ脳細胞が右手を動かす機能をつかさどっていたならば右手が動かなくなり、左手を動かす機能をつかさどっていたならば左手が動かなくなります。このようにして、脳梗塞で麻痺はおきますが、死んだ脳細胞が担っていた機能によっては様々な症状を呈します。しゃべりにくくなったり視野の一部が見えなくなったりします。記憶や計算をする機能を担っていた脳細胞が死んでしまえば認知症を呈するようになります。動脈硬化の進行は年齢が一番の要因です。促進因子としては、たばこ、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症があります。運動不足は直接的にも動脈硬化促進に働きますし、糖尿病や高コレステロール血症の悪化を通じて間接的にも動脈硬化を促進させます。

    心房細動という不整脈があると心臓に血栓を作りやすくなります。できてしまった血栓が脳の血管に飛んでいくと、血管を詰めてしまい血流が途絶します。心源性脳梗塞はこのようにして発症します。心房細動があればすべての人が脳梗塞を起こすわけではありませんが、年に10%程度の確率で発症するといわれています。予防のためには血液がさらさらする薬(抗凝固薬)を服用するのが一番ですが、詰まりやすくなる要素をコントロールすることも大事です。血栓ができやすくなる要素としては、年齢、高血圧、糖尿病、脳梗塞既往があります。このうち、運動不足では高血圧と糖尿病の因子を悪化させます。

    アルツハイマー型認知症ではどうでしょう。アルツハイマー病は脳にアミロイドタンパクというゴミがたまってきて脳細胞が正常には働かなくなる病気です。なぜ、アミロイドが沈着するのかはっきりしたことはわかっていませんが、疫学調査では危険要因がいくつかわかってきています。久山町研究という九大が行っている大規模な疫学調査があります。久山町の住民に協力していただき、血圧や生活習慣などと、疾病の発生を調査している研究です。この研究では、運動不足や耐糖能異常がアルツハイマー型認知症の発生と関連があるとわかりました。アメリカ国立衛生研究所では、認知症予防のために禁煙などとともに運動習慣を続けることが奨励されています。日本では厚労省のアクティブガイドで10%程度の運動増加が奨励されています。

    上野循環器科・内科医院 上野一弘

  • 月報 「聴診器」 2014/11

    月報 「聴診器」 2014/11/01

    10月は大きな台風が2回も来ましたね。幸い直撃はしませんでしたが、大変強い風が吹きました。大きな被害は出ませんでしたが、工事のフェンスが倒れ近隣の方々には大変ご迷惑をおかけしました。皆さんのほうでは被害はなかったでしょうか?

    18 生活習慣 ⑨運動不足と病気 骨粗鬆症

    前回は運動不足で心筋梗塞が増える話をしました。糖尿病、高血圧、高脂血症が悪化し、動脈硬化が進むためです。もちろん、全身の動脈硬化が進みますので、脳梗塞や閉塞性動脈硬化症も増えます。そもそも、我々の体は原始人のころと変わっていません。体を動かすのが前提にできているわけですから、体を動かなさなければいろいろ不都合なことが出るのでしょうね。

    運動不足は動脈硬化疾患以外にもいろんな病気を引き起こすことが知られています。骨粗鬆症は骨の中がスカスカになり、骨折しやすくなる病気です。骨は硬い構造物で、出来上がったら変化しないものと思われがちです。しかし、骨は日々新しく作られ、生成と破壊のバランスの上で形を維持しています。骨を作る働きと壊す働きのバランスが傾くと、骨は弱くなっていきます。骨の生成と破壊はホルモンの作用で決まりますので、加齢や更年期でホルモンバランスが変わると骨粗鬆症になりやすくなります。また、カルシウム不足、日光不足、内分泌疾患も骨粗鬆症を引き起こします。最近は、運動不足も骨粗鬆症の原因であることがわかってきました。骨は縦方向に負荷がかかると微量の電気が流れます。この刺激によって、骨は強さを増す反応をします。また、筋肉を鍛えることで骨が刺激され、骨密度が上がるそうです。そのため、スポーツ選手の骨密度は一般の人よりも高くなりことが知られています。なお、水泳選手では重力による負荷がかからないため、陸上選手ほど骨密度は増加しないそうです。逆に重力による負荷がない状態が続けば骨粗鬆症は進行します。例えば、いろいろな病気で寝たきりが続けば、筋力が衰え骨密度も低下します。宇宙飛行士はその極端な例です。無重力状態では骨に負荷がほとんどかかりませんので急速に骨量が減少します。地球上での骨粗鬆症の10倍の速さで、骨量の減少が進行するそうです。宇宙ステーションに滞在中は骨からカルシムが溶けだし、尿中カルシウムが増えるため尿路結石もできるそうです。この予防のため、最近では骨粗鬆症薬のビスホスホネートを使用しています。運動による骨粗鬆症の予防も早くから取り入れられていました。ダンベルなどの重量負荷はできませんので、ばねやゴムを利用した負荷装置で毎日運動をしているそうです。

    骨粗鬆症では骨が弱くなるため骨折が増えますが、転倒自体が多いことも骨折が多い原因です。骨粗鬆症の方では筋力低下が見られます。あげたはずの足が思ったほど上がらずに段差につまずいたり、意図したほど力が出ないため十分には踏ん張れず転倒をしたりします。また、バランス能力も低下しているので、転び方が派手になり、大けがにつながりやすいといわれています。筋力が低下すると関節に無理な負担がかかり、関節症にもなりやすくなります。運動不足から体重が増えすぎると関節が挫滅し、変形性関節症を発症したりします。

    こうした骨や筋力に低下と関節の障害を合わせて「ロコモティブシンドローム」と呼ばれることもあります。ロコモティブシンドロームは生活の質レベルを低下させ、健康寿命を縮める大きな原因といわれています。

    上野循環器科・内科医院 上野一弘

  • 月報 「聴診器」 2014/10

    月報 「聴診器」 2014/10/01

    旧診療所の取り壊しが終わりました。工事の関係で皆様には多大なご迷惑をおかけしています。旧診療所は約30年前に父が作りました。設計は現診療所と同じヴォーリス建築事務所でした。長年お世話になった建物でしたので残しての活用を検討しましたが、設備の老朽化も激しく取り壊すこととしました。父も、空き家になっている旧診療所の保安には不安もあったそうなので、ほっとしたとのことでした。10月からは心臓リハビリテーション棟の建築がはじまります。皆様には、引き続きご面倒をおかけします。より良い医療を行うことで恩返しをしたいと思います。

    18 生活習慣 ⑨運動不足

    前回までは、摂取するものの害について説明してきました。生活習慣として忘れてはならないのが運動不足です。運動不足は肥満、糖尿病、高血圧、高脂血症と密接な関係があります。運動不足は直接的に使用カロリーを減らすため、栄養の需要と供給のアンバランスを招きます。供給過多になるわけです。このため、運動に使用されるはずであった、糖分が蓄積し糖代謝の悪化を招きます。また、長時間運動をしていると脂肪もエネルギー源として使用されるはずですが、この脂肪もたまってしまうため高脂血症も悪化します。もちろん肥満にもなります。これらの疾患は動脈硬化を促進させ、心筋梗塞を起こします。運動不足は心筋梗塞の原因になるのです。

    運動不足が疾病の原因となるのがわかったのは比較的最近になってからです。交通が発達する以前は、ほとんどの人が体を動かざるを得ませんでしたので、運動不足の人そのものがあまりいなかったわけです。それよりも過労や栄養不足が疾病の主たる原因でしたので、運動が体に良いとは思われていなかったようです。例えば、イギリスのチャーチル首相は成功の秘訣として「活力を無駄遣いしないことだ。座れる時ならば立たずに座り、寝そべっていられるならば座らず寝そべるべきだ。」とまで言っています。しかし、交通が発達し、車社会になってくると動脈硬化疾患が増えてきました。運動不足が心筋梗塞の原因になることは1960年代にイギリスから報告されました。イギリスは2階建てのロンドンバスが有名です。車掌さんは切符を切るため、車内を歩き回り、階段を上り下りしなくてはいけません。ずっとトレーニングをしている状態なわけです。一方、運転手さんは座ったまま運転を続けなければなりません。そこで、イギリスのモリス博士が車掌さんと運転手さんでの心筋梗塞の発症について調査をしました。すると、30歳から60歳までのどの年齢層でも心筋梗塞の発生率と死亡率は運転手さんのほうが車掌さんよりも多いとの結果が出ました。運動不足が心筋梗塞の原因となることがはっきり示されたのです。

    日本でも、一日の運動時間が30分未満の人、30分程度の人、それ以上運動をする人に分けて10年以上調査した研究があります。30分程度の運動をする人に比べて、運動をしない人では、心筋梗塞と脳卒中での死亡リスクが1.3倍になり、運動をする人では0.8倍程度になっていました。また、運動習慣を取り入れることで、糖尿病や高脂血症が改善し、心筋梗塞の発症が減ったとのデータもあります。

    運動不足は循環器疾患だけでなく、様々な不調をもたらします。筋力が低下し、疲労感や肩こり腰痛を引き起こします。骨にかかる負荷も減り続けるため骨粗鬆症を起こします。最近では、認知症や癌の発症もわずかながら増えることがわかっています。

    上野循環器科・内科医院 上野一弘

  • 月報 「聴診器」 2014/09

    月報 「聴診器」 2014/08/01

    今年の夏は雨が多かったですね。8月の前半も湿度が高く、気温の割に熱中症が多かったようにも思えます。夏には気温が高くなり血圧が下がることが多く、夏は降圧薬を減らすようにしています。今年は、予想よりも気温が上がらなかったので、降圧薬の調節に苦労しました。秋は気候が安定してくれるといいですね。

    18 生活習慣 ⑧過食

    前回までは、アルコールやタバコなどの害を説明してきました。簡単に言うと、毒をわざわざ口にしないほうがいいということです。しかし、体に必要なものもとりすぎると害になります。糖尿病や高コレステロール血症、高血圧、痛風は過食で悪化することが知られています。過食の罪と罰ですね。キリスト教の7つの大罪には「傲慢」や「嫉妬」とならんで「暴食」が挙げられています。昔から過食は人類の悩みだったようですね。

    摂取する栄養が多すぎると、どの成分でも害をもたらします。水やビタミンでも同様です。しかし、現代社会で問題となっているのは主に糖分と塩分です。多すぎる糖分は糖尿や高脂血症を招き、動脈硬化を促進させます。特に、食後の高血糖は動脈壁を傷つけ、動脈硬化をより悪化させて、心筋梗塞や脳梗塞を招きます。もちろん、糖尿病があれば合併症で苦しむことになります。糖尿病性網膜症で失明する方は年間3000人ほどいます。糖尿病性腎症は1万人ほどいるそうです。塩分は程度の差こそあれ、血圧を上昇させます。日本人は高血圧による脳出血が多く、塩分摂取の多さが原因といわれています。世界的に見ても、日本人と韓国人の塩分摂取量が多いそうです。

    糖分も塩分も本来体にとって必要不可欠な物質です。太古、我々の先祖が文明を持ってないときには食料は貴重品だったはずです。特に塩分とエネルギー源がなければ、生命や種族が維持できなくなります。食糧不足が、今そこにある危機だったのでしょう。長い進化の過程で貴重な塩分と糖分をため込める能力があった個体だけが生き延び、遺伝的形質として獲得したのだろうといわれています。貴重品を大切に使用できる遺伝的形質なので節約遺伝子などと呼ばれたりします。進化の過程は数万年という単位で変化しますが、文明の歴史はせいぜい1万年ほどです。それも、多くの人に栄養が十分いきわたるようになって、数十年しかたっていません。身体と環境にミスマッチが起きているのです。

    過食の時代といわれていますが、日本人の摂取カロリーは1975年ピークを迎え、緩やかに減少しています。塩分摂取量も横ばいです。しかし、個別にみるとどうしても過食をやめられない人がいます。健康を害していても、お菓子や炭水化物をやめられず、病気が悪化する人がいます。これは、糖や炭水化物に中毒性があるのではないかとの仮説があります。糖や炭水化物をとることで、脳内麻薬物質が分泌され、それが癖になっているというわけです。この説によると、炭水化物中毒者は身体的精神的ストレスがかかると、糖や炭水化物がほしくてたまらなくなるそうです。この時の食欲は空腹感とは関係ありません。また、エネルギーは十分足りていても、定期的に糖や炭水化物をとっていないと、イライラしたり集中力がなくなったりするそうです。

    この仮説はちょっと極端な感じもしますが、確かにご飯やお菓子が異常に好きな方はいるようです。お菓子を買う前に「ひょっとして中毒かも?」と自問してみてください。

    上野循環器科・内科医院 上野一弘

  • 月報 「聴診器」 2014/08

    月報 「聴診器」 2014/08/01

    7月中旬までは雨が多くて比較的涼しかったのに、いきなり暑くなりましたね。熱中症も急増しているようです。エルニーニョ現象で冷夏だとかの話はどこに行ったのでしょうか。

    18 生活習慣 ⑦アルコールによる感情障害など

    なぜ、酒なんかのむの?」と、王子さまはたずねました。

    「忘れたいからさ」と、呑み助は答えました。

    「忘れるって、なにをさ?」と、王子さまは、気のどくになりだして、ききました。

    「はずかしいのを忘れるんだよ」と、呑み助は伏し目になってうちあけました。

    はずかしいって、なにが?」と、王子さまは、あいての気もちをひきたてるつもりになって、ききました。

    「酒のむのが、はずかしいんだよ」というなり、呑み助は、だまりこくってしまいました。

    -「星の王子様」から

    アルコールは服用すると一時的に気分の高揚や多幸感をもたらします。しかし、場合によっては孤独感や絶望感が増すことがあります。泣き上戸、怒り上戸という言葉もあるぐらいです。また、飲酒習慣が続くと非酩酊時にも気分障害が出ることがあります。些細なことで気分が沈んでしまったり、怒りっぽくなったりすることがあります。感情が抑制できなくなる人も多いようです。

    アルコールとうつ病は密接な関係があるといわれています。アルコール依存症では、うつ病の発症リスクが4倍程度に跳ね上がるそうです。ただし、その機序はよく分かっていません。最近では脳の海馬の萎縮が関係しているのではないかといわれています。

    また、アルコールは自殺とも関係があるといわれています。自殺した人の37%からアルコールが検出されています。自殺未遂で救急外来を受診した人の40%からアルコールが検出されます。つまり、自殺する直前にアルコールを飲んでいることが多いのです。自殺することを決めてから、死の恐怖を消すためにアルコールを摂取することもあるようですが、未遂者の調査からは飲酒した後に自殺を決断することが多いようです。これは、飲酒が絶望感・孤独感・憂鬱気分を増強するからであろうといわれています。また、アルコールによって攻撃性が高まり、その攻撃性が自分に向けられているためとの意見もあります。

    習慣的な飲酒が自殺率を高めるとのデータもあります。アルコール依存症では自殺の危険性が6倍に高くなるそうです。アルコール依存症の診断がされていなくても多量飲酒の習慣があれば自殺の危険性は2.3倍になります。

    不眠の解消のためにアコールを摂取する方がいますが、これは逆効果です。アルコールによる酩酊で一見寝つきがよくなったように思えますが、その眠りは浅く、早朝覚醒の原因となります。時にアルコールと睡眠薬を併用する人がいますが、これは大変危険な行為です。相乗効果により一時的な記憶障害や、異常行動の原因となります。認知症発症の危険性も増します。

    気分の落ち込みや、不眠の解消のためにアルコールを摂取するのは地獄の悪循環の始まりです。冒頭の「星の王子様」の話は、飲酒による気分障害と、さらなる飲酒による悪循環を見事に表現していると思います。

    上野循環器科・内科医院 上野一弘

  • 月報 「聴診器」 2014/07

    月報 「聴診器」 2014/07/01

    サッカー・ワールドカップは残念な結果でしたね。順当な結果ではあったかもしれませんが、直前までの報道での盛り上がりで期待が高まりすぎたのかもしれません。4年後を視野に、まずはJリーグから応援しましょうか。

    18 生活習慣 ⑥アルコールによる精神障害

    健康に悪い習慣の代表がタバコとアルコールですが、両者には少し違う点があります。タバコは少量でも健康被害があり、長所は何一つありません。一方アルコールは少量であれば、やや健康に良いというデータもあります。また、気分を高揚させたりリラックスさせる作用もあります。一種の有機溶剤ですので、水には溶けない成分を含むことができます。このため複雑な味を醸しだし、食文化とも切り離せません。ただし、アルコールのほうが悪い点もあります。周囲を巻き込む点です。飲酒運転による事故はずっと続いていますし、アルコール中毒による家庭崩壊もしばしば耳にします。

    アルコールによる健康被害といえば肝臓がすぐに思い浮かびます。ほかにも、糖尿病も悪化し、尿酸値と中性脂肪も高くなります。感染症に弱くなり、肺炎を起こしやすくなります。特殊な状態では胎児性アルコール症候群が挙げられます。妊娠中の飲酒により出生時に障害が出る病気です。小頭症や発達障害を特徴とします。もちろん、成人における多量飲酒は脳みそに悪影響を与えます。アルコールによる精神障害は意外と多いといわれています。

    アルコールは依存性があるため、アルコール中毒になり、連続飲酒を繰り返し、酩酊状態が続きます。酩酊時に反社会的行為を繰り返したり、家庭内暴力を起こすこともあります。

    多量飲酒を続けていると非酩酊時にも症状が出てきます。アルコールは分解時にビタミンBを消費します。多量飲酒を続けていると慢性的なビタミンB不足によりウェルニッケ脳症を発症します。ウェルニッケ脳症では短期記憶が著明に低下します。ひどくなると、今ここにいること、今行っていることを時間的に連続して認識できなくなります。脳はこの状況に対して無意識にストーリーを作り上げることがあります。次から次に虚偽の話を作り出し、自分自身もそれを信じ込んでしまいます。これは意識的に行われるわけではありませんので、虚偽の話をしているその瞬間には、作り話そのものがその人の現実となっています。この状態はコルサコフ症候群と呼ばれています。

    アルコールが認知症を引き起こすことも知られています。ウェルニッケ脳症との区別はつきにくいのですが、典型的なコルサコフ症候群を呈さず、認知機能の低下が主のものはアルコール性認知症と呼ばれるようです。機序ははっきりとはしていませんが、前頭葉を中心に脳委縮が見られるのが特徴です。アルコール依存症の40%に発症し、逆に認知症患者の30%はアルコールに関連があるそうです。ひどい場合には寝たきりになります。

    介護保険や福祉の書類審査をしていますと、アルコール性認知症のために介護を受けたり、入院をしている人は驚くほど多くいます。他の認知症疾患では、進行を遅らせる薬はあっても有効な治療法はありません。しかし、アルコール性認知症の初期では、断酒ができれば進行を予防できます。場合によっては改善することもあるそうです。しかし、残念ながら、アルコール依存のためか、断酒を行う方はほとんどいません。

    上野循環器科・内科医院 上野一弘

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