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  • 月報 「聴診器」 2006/6

    月報 「聴診器」 2006/6/1

    なんだか5月は寒かったですね。ようやく暑くなったとおもったらもうすぐ梅雨です。どうも変な気候が続きますが、体調には気をつけてください。

     

    6 心不全④不全の治療:慢性期

    さて、利尿剤や強心剤を使用し急性心不全を乗り切れたら慢性期の治療へと移行します。古くは慢性心不全の治療も急性心不全と同じような考えで進められていました。「心臓の動きが悪いのであれば、良くすればいいじゃないか!!」との発想でさまざまな強心剤が開発されました。ホルモンの刺激剤や心筋内のカルシウム濃度を増やす薬などが次々に開発され大きな期待が寄せられました。しかし、望んだような結果は得られませんでした。投薬により、一時的に症状が改善するのですが、長期的には心不全が悪化してしまったのです。

    この反省からわかってきたことは、「弱った心臓を無理やり動かしても長持ちしない」ということでした。無理やり動かせば、疲れるばっかりだったんですね。そこで「心臓の負担を減らして休ませたら、長持ちするんじゃないだろうか」と考えました。具体的には、血管を拡張させる治療が行われました。これが実にいい結果をもたらし、以後の心不全治療の主流となりました。これを、血管拡張療法といいます。

    ところが、その後さらに新しい考え方が出てきました。心臓は体に血液を送り出すポンプの役目をしていますが、内分泌臓器としても働いています。さまざまなホルモンの影響を受けたり、自分からホルモンを出したりしているのです。心不全の病態についても、単に機械的不具合と言ったことだけでなく、ホルモンバランスの悪化との側面でもとらえられるようになってきました。そこで、心臓に対して悪い作用をもたらすホルモン(レニン・アンギオテンシン系やカテコールアミンなど)をブロックする薬が使用されました。これらの薬はすでに高血圧の薬として使用されているものでしたが、心不全についても劇的に寿命を延ばすことがわかってきました。

    現在の慢性心不全の治療はこのような考えの下に行われています。予後を改善する薬としてはACE阻害薬、ARB、アルドステロン拮抗薬、ベーターブロッカーなどが使われます。これらの薬を使用する際、できるだけ血圧を下げて、心臓の負担を減らすことが大切です。ふらつきなどの症状がなければ、90mmHg以下まで血圧を下げて治療することもよくあります。利尿剤は、長期的には腎臓や心臓そのものに影響を与えるので、むくみ具合などを見ながら、必要最小限量で使用するようにしています。

    心不全の治療薬は「高血圧の薬」として売られている場合が多いので、薬局でもそのように説明され、不思議に思っている方もいると思います。しかし、心臓病がある場合には、「心不全の治療薬」として飲んでいただいていますので、安心して内服を続けてください。

    上野循環器科・内科医院  上野一弘

  • 月報 「聴診器」 2006/5

    月報 「聴診器」 2006/5/1

    連休はいかがでしたか。僕は家族で海まで遠足に行きました。子供たちは以外にも元気に歩き通してくれました。ただし、パパはダウン寸前で日ごろの運動不足を痛感しました。

     

    6 心不全④不全の治療:急性期

    心不全を思わせる症状があり、検査で心不全とわかれば次は治療です。心不全の治療について大事なのは急性期の治療と慢性期の治療を区別することです。まずは急性期の治療から説明しましょう。

    心臓の機能が衰えると体がむくんだり、息が苦しくなったりします。これが急性心不全です。急性心不全の治療では、まず心機能が低下している原因を治療することが重要となってきます。心機能低下の原因が急性心筋梗塞であれば、カテーテル検査をして早急に血行再建を行います。もし、原因が不整脈であれば抗不整脈薬を投与したり、電気ショックをしたりします。もともと心機能が低下している場合に、体が無理をして急性心不全を起こすことがあります。このときにも、その原因の治療が大事になってきます。たとえば、感染症がきっかけで心不全を発症した場合には抗生剤が必要ですし、貧血があればその治療をします。そして何より安静が一番大事です。

    心不全は心臓による血液の供給と体の需要のバランスが崩れる病態です。したがって、心不全時には組織の血流が低下します。血液はさまざまなものを運んでいますが、一番重要なのは酸素です。そこで、急性心不全の治療ではできるだけ酸素濃度をあげるようにします。

    急性心不全時には心臓のポンプ機能と体の水分バランスが崩れています。多くの場合はポンプ機能に比べて水分量が多すぎる状態になっています。この多すぎる水分が手足をむくませたり、肺にたまって呼吸困難を引き起こしたりします。多すぎる水分を出すためには利尿剤を使用します。利尿剤を投与しても尿が出ない場合には緊急に透析をします。透析ができない環境で急ぐ時には瀉血(血液を抜くこと)をする場合もあります。ただし、心機能が非常に低下している場合には、急に水分量を減らすと血圧が下がってショック状態になることもあるので注意が必要です。

    血圧のコントロールも大事です。高い血圧は心臓に余計な負担をかけ、心不全を悪化させていきます。薬で血管を広げて、心臓が楽に動けるようにします。ただし、血圧が低すぎてもよくありませんので、だいたい90-140mmHg程度になるようにします。

    心機能が非常に低下している場合には、強心剤を使用する場合もあります、最近は漫然とした強心剤の使用について反省されていますが、やはり急性心不全の治療に強心剤は強い味方となります。強心剤の代わりに補助ポンプを使用するときもあります。空気で広がる細長い風船を動脈に入れて補助ポンプにするのです。それでもだめなときには、体外式の補助ポンプを使用します。最重症例では一時的に体外式人工心肺を使用して心臓が動かなくても何とかなる状態にします。

    上野循環器科・内科医院  上野一弘

  • 月報 「聴診器」 2006/4

    月報 「聴診器」 2006/4/1

    一暑くなりましたね。宗像では冬から一気に夏になるような気がしますね。

     

    6 心不全④不全の治療

    心不全を思わせる症状があり、検査で心不全とわかれば次は治療です。心不全の治療について大事なのは急性期の治療と慢性期の治療を区別することです。まずは急性期の治療から説明しましょう。

    心臓の機能が衰えると体がむくんだり、息が苦しくなったりします。急性心不全です。急性心不全の治療では、まず心機能が低下している原因を治療することが重要となってきます。心機能低下の原因が急性心筋梗塞であれば、カテーテル検査をして早急に血行再建を行います。もし、原因が不整脈であれば投薬をしたり電気ショックをしたりします。また、もともと心機能が低下している場合に、体が無理をして急性心不全を起こすことがあります。このときにも体が無理をしている原因の治療が大事になってきます。たとえば、感染症がきっかけで心不全を発症した場合には抗生剤が必要ですし、貧血があればその治療をします。何より安静が一番大事です。

    心不全は心臓による血液の供給と体の需要のバランスが崩れる病態です。したがって、心不全時には組織の血流が低下します。血液はさまざまなものを運んでいますが、一番重要なのは酸素です。そこで、急性心不全の治療ではできるだけ酸素濃度をあげるようにします。

    急性心不全時には心臓のポンプ機能と体の水分バランスが崩れています。多くの場合はポンプ機能に比べて水分量が多すぎる状態になっています。この多すぎる水分が手足をむくませたり、肺にたまって呼吸困難を引き起こしたりします。多すぎる水分を出すためには利尿剤を使用します。利尿剤を投与しても尿が出ない場合には緊急に透析をします。透析ができない環境で急ぐ時には瀉血(血液を抜くこと)をする場合もあります。ただし、心機能が非常に低下している場合には、急に水分量を減らすと血圧が下がってショック状態になることもあるので注意が必要です。

    心機能非常に低下している場合には、強心剤を使用する場合もあります、最近は漫然とした強心剤の使用について反省されていますが、やはり急性期の治療には強心剤は強い味方となります。強心剤の代わりに補助ポンプを使用するときもあります。空気で広がる細長い風船を動脈に入れて補助ポンプにするのです。それでもだめなときには、体外式の補助ポンプを使用します。最重症例では一時的に体外式人工心肺を使用して心臓が動かなくても生きて聞ける状態にします。

    上野循環器科・内科医院  上野一弘

  • 月報 「聴診器」 2006/3

    月報 「聴診器」 2006/3/1

    ようやく、暖かさの兆しが見えてきましたね。その代わり、花粉が飛び始めました。今年は去年ほどの飛散量は無いそうですが、症状のつらさは変らないようです。花粉症は、花粉の量だけでなく、排気ガスの量や体調にも左右されるようですね。

     

    6 心不全②心不全の症状

    前回は、大まかに心不全の病体について説明しました。では、心不全のときにはどんな症状が出てくるのでしょう。心不全には二つの病態が潜んでいます。拡張不全によるうっ血と、拍出量不足による組織の血流不足です。したがって症状も二種類に分けて考えられます。うっ血のほうでは、症状はむくみとなって現れます。足がむくむとき、顔がむくむときは心不全を疑います。足のむくみは「靴下の痕がはっきり残る」「足が重たい」などの訴えとなることが多いようです。顔のむくみは本人は気がつかないことが多く、家族や医師から指摘されることが多いようです。僕は、診察中には必ずまぶたを見るようにしています。肺がむくめば、酸素を上手に取り込めなくなり息苦しくなります。肺は小さな泡が集まったような構造をしていますが、酸素はこの泡の壁の部分から吸収されます。まず、この壁の部分むくみが始まり、酸素の吸収が低下するのです。むくみが進めば気管支や肺の外側にも水がたまります。

    最初は、無理な運動をすると息苦しく感じますが、心不全が進めば少しの動作で息苦しさを感じるようになります。やがて、じっとしていても息が苦しくなります。心不全のときには寝ると息苦しさが悪化するのが特徴です。これは、寝ることで足の静脈血が胸に帰りやすくなり、結果的に肺のむくみが増悪するからです。このとき、血液中の酸素が低下するため、爪や唇がどす黒くなります。このとき、肺胞から水が染み出してきて痰が多くなりますが、典型的には水っぽいピンク色の痰が出ます。ここまで進めば、救急車で即、入院です。

    また、心不全では心拍出量が減り、全身の臓器に血液が不足します。四肢の血流が不足すれば、手足が異常に冷たくなって色が悪くなります。頭の血流が不足すればフラフラします。腎臓の血流が不足すれば尿が少なくなります。ひどい場合には、冷や汗が出て身の置き所の無いきつさに襲われます。心拍出量の不足によって腎血流が低下すれば、尿が減り、うっ血がひどくなります。また、うっ血がひどくなれば心臓の負担が増え、心拍出量が更に低下します。むくみと、血流不足の悪循環が存在するのです。

    もともと心臓が悪い人が無理をすると、心不全が増悪しやすくなります。たとえば、いきなり力仕事を沢山するとか、感染症にかかるとか、塩分の多い食事をするなどのきっかけで、症状が悪化することが多いようです。症状が軽度の心不全でも、無理が重なれば悪循環が始まれば、瞬く間に増悪していきます。実際、こちらがヒヤリとすることもしばしばです。疑わしい症状があれば、無理せず安静にして早めに受診してください。

     

    上野循環器科・内科医院  上野一弘

  • 月報 「聴診器」 2006/2

    月報 「聴診器」 2006/2/1

    寒さも一段楽したようですね。でも、去年はここから寒さがぶり返していましたね。皆様も気を抜かずに体調管理に勤めてください。

     

    6 心不全①心不全とは

    これまで、いろんな心臓の病気の話をしてきました。心筋梗塞や弁膜症、心筋症でさまざまな症状が出ます。その中で特に問題となるのは心不全と突然死です。今回からはまず、この心不全について説明していきます。

    心臓は筋肉で出来たポンプになっています。このポンプは二つの重要な役割をしています。ひとつは静脈から帰ってきた血液を受け取る役割です。もうひとつは、心臓から全身に血液を送り出す役割です。血液は心臓から全身に送られ、全身から心臓に帰ってきます。血液は体に栄養や酸素を届けた後、静脈を通って心臓に帰ってきます。心臓では右心房にまず血液は集められ、ついで右心室に運ばれます。血液は右心室から肺動脈を通って肺に届き、肺で酸素をたっぷり吸って肺静脈から左心房に帰ってきます。そして左心房から左心室に行き、左心室から全身に送られます。

    心臓の働きが悪くなれば、この血液の流れに支障が出ます。心臓が血液を受け取る役目が衰えてくると、肺や全身の血液が心臓に帰ってきにくくなります。静脈が拡張し圧力も高くなってきます。すると、血管から水分が回りに染み出してきます。顔や足に水分が染み出せば、「むくみ」となります。肺に染み出せば「肺水腫」となります。肺水腫になれば、肺に酸素があまり入らなくなり、しかも血液が酸素を取り込みにくくなります。非常に息苦しくなるわけです。肺水腫では寝ると息苦しさが悪化するのが特徴です。これは、寝ることで足の静脈血が胸に帰りやすくなり、結果的に肺のむくみが増悪するからです。これらを「うっ血性心不全(Conjunctive Heart failure: CHF)」と言います。

    心臓が血液を送り出す力が弱ると、全身の臓器に血液が不足します。四肢の血流が不足すれば、手足が異常に冷たくなって色が悪くなります。頭の血流が不足すればフラフラします。腎臓の血流が不足すれば尿が少なくなります。ひどい場合には、冷や汗が出て身の置き所の無いきつさに襲われます。これらを「低心拍出量症候群(Low Output Syndrome :LOS)」といいます。

    正常な心臓でも、処理すべき水分量が過量だとうっ血が起こり、水分量が少なすぎると低心拍出量となります。ただし、正常な心臓では処理可能な水分量の範囲が広く、少々のことではどうもありません。一方、病的な心臓では適正な水分量の範囲が狭く、容易に心不全を起こします。病態に応じた適切な水分量を考えて治療を行っていきます。うっ血性心不全と低心拍出量症候群は別々に起きる場合もありますが、同時に起こることもあります。この場合は治療に大変苦労します。

    上野循環器科・内科医院  上野一弘

     

  • 月報 「聴診器」 2006 /1

    月報 「聴診器」 2006/1/1

    新年あけましておめでとうございます。以前から懸案だったテレビをつけてみました。いかがでしょうか。少しでも待ち時間が楽しく過ごせるとよいのですが。

     

    5心筋症④

    前回までは、心臓の筋肉自体の異常で起こる病気、拡張型心筋症や肥大型心筋症についてお話をしてきました。これらの心筋症がなぜ起こるかは正確にはわかっていませんが、遺伝的な異常や感染症が関与していると考えられています。

    ただし、心筋症の中には他の病気に引き続いて起こるものがあります。これを続発性心筋症や二次性心筋症と呼びます。

     

    高血圧性心臓病;続発性心筋症で一番多いものです。血圧が高いとその血圧に対抗して、心臓は収縮をしますので、このため心臓の筋肉が厚く硬くなります。そのまま高血圧が続けば、そのうち心臓の収縮が低下し、心不全を起こすようになります。

     

    サルコイドーシス性心筋症;サルコイドーシスは肺や皮膚、目などに結節を作る病気です。基本的には良性の病気ですが、心臓に結節を作ると不整脈や突然死の原因となったりします。

     

    アミロイドーシス;アミロイドと呼ばれる小さな物質が体の隅々にたまる疾患です。胃腸の粘膜にアミロイドが貯まると下痢や消化不良が続いたりします。神経にたまれば手足がしびれてきたり排尿が困難になったりします。心臓にたまれば、心筋が厚ぼったくなったり脈拍が遅くなったりします。末期には心臓の周りに液体がたまり心不全となります。

     

    筋ジストロフィー;先天的に筋肉が障害を受ける病気です。全身の筋肉が弱ってくるため歩行がしにくくなってきます。病気が心臓にまで波及すると、心臓の動きが悪くなります。

     

    皮膚筋炎;膠原病の一種で、自分の皮膚や筋肉に対する自己抗体が出来て炎症を起こす病気です。全身の筋肉が弱まってきますが、心臓まで波及すれば心臓の収縮が弱くなります。

     

    リンパ腫;血液の病気の一種です。全身のリンパ節が腫大していきます。心臓に腫瘤を形成し、不整脈や心不全の原因となることがあります。

     

    頻拍惹起性心筋症;頻拍性不整脈が続くと心臓が疲れてしまって動きが悪くなります。アブレーションなどで頻拍の治療が出来れば、心臓の動きも元に戻ります。

     

    いずれの続発性心筋症でも源疾患の治療が第一になってきます。心筋症を疑ったときには、これらの疾患をチェックすることも大切です。

    上野循環器科・内科医院  上野一弘

  • 月報 「聴診器」2005/12

    月報 「聴診器」 2005/12/1

    いよいよ師走ですね。今年もあっという間に一年が過ぎました。皆様にとっては良い年だったでしょうか。良かった人も、そうでなかった人も来年はいい年になるといいですね。

     

    5心筋症③

    今回は不整脈源性右室心筋症(Arrhythmogenic Right Ventricular Cardiomyopathy: ARVC) についてお話をします。耳慣れない病気と思いますが、確かに非常に珍しい病気です。日本全国でも200名前後しかいないと思います。けれども、以前僕はこの病気の研究をしていたので、ちょっと話をさせていただきます。

    40年ほど前にイタリヤで列車事故がありました。山から下ってきた列車がブレーキをかけずに終点の駅に突っ込んでしまったのです。どうやら運転手が気を失ってブレーキがかけられなかったようです。大勢の人と一緒に運転手も亡くなりましたが、その運転手はこれまで特に病気は指摘されていなかったそうです。遺体を解剖してみると右心室が異常に大きく、心筋に脂肪がたくさん混じっていました。このから、この運転手はARVCで不整脈を発症したために失神し大事故につながったのだろうと推測されました。

    心筋梗塞や弁膜症、拡張型心筋症の存在は早くから知られていました。これらは、左心室の病気です。ふつう、医者が「心臓」や「心機能」というときは「左心室」や「左心室機能」の話をしていることが多いです。心臓には右心房、右心室、左心房、左心室の4つの部屋があります。このうち、左心室は全身に血液を送っている部屋であり、一番大事な部屋です。左心室が止まれば人間は死にますし、動きが悪くなれば心不全を起こします。他の3つの部屋が止まっても、多少の不具合は生じますが、命に別状はきたしません。ところが、原因不明の突然死を起こす人たちの中に、右心室が異常大きく、右心室の心筋に脂肪組織が浸潤した症例が多く存在するのが分かって来ました。このような症例を多く集め、新しい心筋症としてF.Marcus医師とG. Fontane医師が1982年に発表しました。原因不明の突然死の解明につながると注目され、その後同様の症例が世界中で見つかりました。最近では猫や犬にもこの病気が発症することが知られています。

    ARVCでは徐々に右室心筋が障害を受け、脂肪に置き換わっていきます。このため、右心室の収縮力が低下し、右心室が拡張してきます。右心室の筋肉が傷害されているため、そこから不整脈がよく出てきます。特に、心室頻拍などの致死性不整脈が多く見られます。この不整脈が突然死の原因になるのです。しかし、左心室は正常な場合が多く心不全症状などは早期には出現しません。したがって、これまでは無症状であったのに突然不整脈が出現して失神したり、死亡したりすることになります。

    ARVCでは心電図にε波と呼ばれる特徴的な波形が認められ、心エコーでは右心室の拡張が認められます。ただし、こういった特徴的な所見にかける症例もあり、カテーテル検査や心筋生検(心臓の筋肉を少し採ってきて、顕微鏡で調べる検査)が必要な場合もあります。

    上野循環器科・内科医院  上野一弘

  • 月報 「聴診器」2005/11

    月報 「聴診器」 2005/11/1

    急に寒くなってきましたね。風邪の患者さんも増えてきました。風邪は基本的には粘膜の病気です。粘膜は乾くと弱ってきます。風邪の予防のため、鼻やのどが乾かないようにしてください。

     

    5心筋症②

    前回は、拡張型心筋症の話をしました。拡張型心筋症は心臓がふくらんでくる病気です。心筋症の中には、心臓がふくらまずに、壁が厚くなってくる病気があります。これは肥大型心筋症と呼ばれます。

    肥大型心筋症では、心臓の筋肉自身が病気になり、筋繊維一本一本が太くなってきます。心臓の筋肉が厚ぼったくなると、心臓が硬くなってきます。心臓は血液を送り出すと同時に血液を受け取っていますが、心臓が硬くなってくるとこの血液の受け取りが不得意になってきます。そうすると、一見心臓の収縮はいいのに心不全を起こしやすくなってきます。また、心筋が肥大すると不整脈がよく起きるようになってきます。脈拍は心臓の中に電気が流れることによって調節されていますが、心臓の筋肉がダメージを受けた状態では、この電気の流れが乱れて不整脈が起きやすくなっているのです。特に肥大型心筋症では、あまり病気が進んでない段階でも危険な不整脈が出ることがあります。中には、遺伝的に肥大型心筋症があり、突然死が多い家系も見つかっています。

    肥大型心筋症の中でも閉塞性肥大型心筋症と呼ばれるものは予後があまりよくありません。これは、左心室の出口部分が狭くなって心臓に負担がかかる疾患です。左心室は大動脈から全身に血液を送り出しています。その左心室から大動脈へ向かう部分の筋肉が厚くなることがあります。厚くなると出口が狭くなってきます。狭くなってくると左心室が血液を送り出すのに余計圧力をかけなければいけなくなり、心臓の中の圧力が極端に高くなります。たとえば、全身の血圧が120mmHgぐらいでも心臓の中では200mmHg以上ある場合があります。圧力が高すぎると心臓が収縮できなくて動かなくなることもあります。この閉塞性肥大型心筋症に対しては、いろいろな薬物や、ペースメーカーで治療を行います。それでも、治療が困難な場合は手術で肥大した部位を切り取ります。最近では、カテーテルを使って肥大した部位を除去する方法も開発されています。

    心電図異常や不整脈の患者さんに心エコーをすると心肥大が見つかることがあります。ただし、心肥大があればすべてが肥大型心筋症ではありません。多くは高血圧による心肥大で肥大型心筋症とは肥大のパターンがやや異なります。他にも、アミロイドーシスや弁膜症との鑑別も必要です。診断が難しい場合は、カテーテル検査や心筋生検を行う場合もあります。

    上野循環器科・内科医院  上野一弘

  • 月報 「聴診器」2005/10

    月報 「聴診器」 2005/10/1

    ようやく、涼しい風もときおり吹くようになってきましたね。今年の夏は、無事に過ごせたでしょうか。気候がよくなり、食べ物がおいしくなってくると糖尿病やコレステロールの値が悪化してくるかたもいらっしゃいます。「スポーツの秋」、「読書の秋」がいいですね。

     

    5心筋症①

    これまで、不整脈や心筋梗塞、弁膜症で、心臓の力が弱まる話をしてきました。では、それらの疾患が無ければ心臓の力が弱まらないかといえば、そんなことはありません。「心筋症」という病気があり、これによって心臓の力が弱まることもあるのです。

    心臓というのは、筋肉で出来た袋です。この袋が、筋肉の力で縮むことによって血液を押し出しているのです。ところが、様々な原因でこの筋肉が弱れば、縮む力も弱くなり、心臓の機能が損なわれてしまいます。この、心臓の筋肉自身が弱っていく病気を「心筋症」といいます。心筋症は「特発性心筋症」と「続発性心筋症」に分けられます。「特発性心筋症」とは、特にはっきりした原因疾患が無いのに心臓の筋肉が弱っていく病気です。「続発性心筋症」とは、いろいろな病気、例えばサルコイドーシス症やアミロイドーシなど、が原因で心臓の筋肉が弱ってしまう病気です。「特発性心筋症」は、その形態的差から「拡張型心筋症」と「肥大型心筋症」と「拘束型心筋症」に分けられます。

    拡張型心筋症はその名のとおり、心臓が大きくなっていく心筋症です。心臓の筋肉自身がダメージを受けて、収縮力が弱くなってくると、心臓は拡張を始めます、ここで注意しなければならないのは「拡張」と「肥大」の言葉の違いです。心臓の内腔が大きくなることは「拡張」と呼ばれ、心臓の筋肉自信が厚くなることは「肥大」と呼ばれます。拡張と肥大が同時に起こることもありますが、拡張型心筋症では拡張だけが起こり、肥大は起こりません。むしろ、心臓の筋肉は薄くなっていきます。一度、拡張が始まれば、弁膜症が悪化したり、心臓に無理がかかったりして更なる拡張を招きます。拡張型心筋症が進んだ患者さんでは、心臓の大きさが倍以上になり、収縮力が半分以下になったりします。拡張型心筋症が進行すれば、体に十分な血液を送れなくなり心不全状態となります。また、不整脈も頻発するようになります。脈拍は心臓の中に電気が流れることによって調節されていますが、心臓の筋肉がダメージを受けた状態では、この電気の流れが乱れて不整脈が起きやすくなっているのです。

    拡張型心筋症ではなぜ心臓の筋肉が弱っていくのかあまりよく分かっていません。心臓の筋肉の感染症が原因であるといわれたり、遺伝的に心臓の筋肉が弱いといわれたりしています。また、その病態も、急速に進行するものから、徐々にしか進行しないものまで様々です。現在では、いろいろな原因による、いろいろな心臓の筋肉の病気が、同じような形態をとってしまったのではないかと考えられています。

    上野循環器科・内科医院  上野一弘

  • 月報 「聴診器」 2005/9/1

    月報 「聴診器」 2005/9/1

    暑い日が続きますが、朝晩は少し涼しい風が吹いてきました。いつのまにか、蝉の声も「ジージー」から「ツクツクホーシ」に代わっています。少しずつ秋の気配ですね。

     

    4弁膜症④ 症状、検査、治療

    前回まで、僧帽弁疾患、大動脈弁疾患のだいたいのところを説明しました。では、これらの弁膜症ではどんな症状が出てくるでしょうか。僕たち循環器医が弁膜症を疑うのは、①心不全症状がある場合、②不整脈・心電図異常がある場合、③心雑音を指摘された場合、④重症感染の場合です。心不全症状は、弁膜症などで心臓の機能が衰えてくると出てくる症状です。手足がむくんだり、動くと息苦しくなったり、ひどい場合には横になると息苦しくなるため座ったまま寝ていることもあります。弁膜症が不整脈の原因になっている場合があります。不整脈自体はたいしたことの無いものであっても、調べてみるとひどい弁膜症がある場合もあります。また、重症の弁膜症では心臓の形が変形したり、心臓の筋肉が弱ったりして心電図が変化することもあります。ただし弁膜症であれば、必ず心電図変化や症状が出てくるわけではありません。検診や他の疾患で受診していただいたときに、たまたま見つかる場合があります。この場合は軽症なものがほとんどですが、中には定期的な観察が必要な例もありました。重症感染症の場合は、弁膜症がばい菌の巣になっている場合があります。前回述べた感染性心内膜炎ですね。

    さて、弁膜症を疑った場合、次に検査をします。検査の一番初めは、聴診です。医師にとって聴診は基本ですが、検査機器が進歩しすぎたせいでしょうか、最近ではあまり大事にされていないようです。これに関しては、昔の医師のほうが優秀で心雑音だけで細かい診断や、重症度が分かる先生もいらっしゃいました。次に弁膜症の検査で欠かせないのは心臓エコーです。エコーは超音波を利用した検査で、痛みや体に負担をかけることの無い検査です。エコーでは、心臓の形、動き、血流などがわかります。心臓エコーでは、心臓の大きさ、壁の厚さ、収縮の様子、血液の流れを見ます。逆流や加速血流が容易に分かるので、弁膜症の検査にはうってつけです。そのほか、弁の固さや、心臓の中の圧力などもわかります。これらを総合して心臓エコーで重症度を判定することができます。重症であれば、カテーテル検査をします。これは細い管を心臓に入れて行う検査で、入院が必要です。心臓の中に入れた管から圧力をはかったり、造影剤を入れて逆流の様子を観察したりします。

    弁膜症は程度により、軽症、中症、重症に大別されます。このうち、軽症の場合は定期的に心エコーで観察のみおこないます。中程度以上では、内服薬で心臓の負担をとる治療をします。重症例では弁置換術や弁形成術などの手術が行われます。

    上野循環器科・内科医院  上野一弘

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