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  • 月報 「聴診器」 2010/02

    月報 「聴診器」 2010/02/01

    新型インフルエンザワクチンの接種の対象が広がりました。当院でも接種を行っています。ただし、一度新型インフルエンザに感染した人には必要ありません。また、65歳以上の高齢の方に対して、僕は強くは勧めていません。これまでの統計から言えるのは、新型インフルエンザは主に若者の病気だということです。感染者は圧倒的に子供や若者に多く、65歳以上のかたの感染は非常に珍しいといえます。また、少数ですがワクチンを接種した後に具合が悪くなった人も報告されています。ぼくは、65歳以上の方は、ワクチンを打っても打たなくても、寿命に差は出ないのではないかと思っています。

     

    11 脳卒中⑧ 脳梗塞の治療

    前回は脳出血の治療でしたので今回は脳梗塞の治療の話です。脳梗塞は血管が詰まってしまう病気です。血管が詰まってしまえば脳細胞が死んでいきます。大きな脳梗塞では脳がはれたり、生命維持の機能が損なわれたりします。したがって、大きな脳梗塞でも脳浮腫対策と全身管理が必要となります。脳は頭がい骨に囲まれていますので、腫れると骨に圧迫されてダメになってしまいます。特に後頭部の骨に脳が圧迫されると生命維持ができなくなります。治療ではグリセオールなどの脳浮腫治療薬を使用し、感染症や呼吸循環機能の全身管理を行います。

    一度、脳梗塞を起こすと次々に脳梗塞を起こしたり、脳梗塞の範囲がだんだん広がってくることがあります。脳梗塞を起こす時には、血液が固まりやすくなっていたり、動脈のプラークが破れやすくなっています。このため、次々に血管の閉塞が起きるのです。脳梗塞の治療ではこの点を考慮して、血液をサラサラにする薬を投与します。へパリンという薬を使用するのが一般的です。また、急性期には血圧を高めに維持します。脳梗塞の急性期に血圧が下がりすぎると、血管が虚脱して脳梗塞の範囲が広がるためです。

    脳梗塞を起こした場合、いっぺんに脳細胞が死ぬわけではありません。時間を追うごとにだんだんと死んだ細胞が多くなってきます。治療が開始した時点で、死んでしまっている細胞は救えませんが、血流不足による仮死状態の細胞は救ってあげなくてはいけません。最近では血管に血栓が詰まった場合に血栓を溶かす薬を積極的に使用するようになりました。この効果は劇的で、麻痺が完全になおったり、ほとんど脳梗塞の跡が残らないこともあります。ただし、この治療は脳梗塞の超急性期にしかできません。長時間たてば、死にかけだった細胞達は完全に死んでしまい、血行を再建しても細胞はよみがえりません。また、長時間たつと詰まっていた先の血管がもろくなっていますが、ここで、血行がよみがえると出血する可能性があります。これを、出血性脳梗塞と呼びます。大きな出血性脳梗塞は生命の危険をもたらします。

    脳梗塞の長急性期は3時間といわれています。受診して、診断してから治療が始まることを考えると、発症して1時間以内に病院に行かなくてはいけません。麻痺などの怪しい症状があれば、夜中でもすぐに病院へ行くのがよいと思います。

    上野循環器科・内科医院  上野一弘

  • 院長不在のお知らせ

    2020年2月4日(火)午後

    学校検診検討員会の為、院長不在となります。代医で木下医師(女性医師)が診察いたします。

    ご迷惑をおかけしますがよろしくお願い致します。

  • 月報 「聴診器」 2010/01

    月報 「聴診器」 2010/01/01

    新年明けましておめでとうございます。昨年は、当院の新診療所を完成させることができました。移転にはトラブルも予想されましたが、スタッフの努力もありスムーズに行えました。新診療所はやはり仕事がしやすいと思います。複数の患者さんの処置も行えますし、感染症の患者さんを別室で診ることもできます。

    新診療所は皆様のおかげでできた建物です。また、皆様のためになるように作った建物です。皆様にも待合室やトイレが使いやすいとの評判をいただいているようで、非常にうれしく思っています。今年も、よりよい仕事ができるように頑張ります。

     

    11 脳卒中⑦ 脳出血の治療

    前回は脳卒中の検査の話をしました。検査で診断がつけば治療に入ります。今回は脳出血の場合の治療について説明します。どの病気もそうですが、脳出血の治療も急性期と慢性期で異なります。脳出血の急性期の治療の中心は外科になります。まずは、出血を止めることが最優先になります。そのために、血圧をまず下げます。クモ膜下出血などで動脈瘤があれば、開頭し動脈瘤にクリップをかけて止血します。止血していても、血腫という血液の塊が大きく、脳を強く圧迫していれば生命の危険があります。このときは、血腫を除去する手術をします。

    ある程度の降圧が得られ、止血も確認し、血腫の処置が終われば、脳浮腫対策と全身管理が必要となります。脳出血では血腫が脳を圧迫しますが、脳は障害を受けると腫れる性質があります。他の臓器も炎症を起こすと腫れますが、スペースにゆとりがあるのであまり問題にはなりません。しかし、脳は頭がい骨に囲まれていますので、腫れると骨に圧迫されてダメになってしまいます。特に後頭部の骨に脳が圧迫されると生命維持ができなくなります。このため、急性期の治療ではグリセオールなどの脳浮腫治療薬を使用します。脳は全身のコントロールを行っていますので、脳にダメージがあれば全身に影響が出てきます。体温や血圧が変動したり、感染症に弱くなったりします。時々、心臓が悪くることがあります。脳からの刺激がおかしくなり、心臓の一部が止まってしまうことがあります。ひどい場合には心不全をおこします。心臓の一部が動かない様子が、タコつぼのようなので「蛸壺心筋症」と呼ばれています。脳の状態が落ち着けば、心臓の動きはもとにもどります。

    急性期を乗り切れば退院して慢性期の治療に移行します。慢性期の治療の中心は再発防止と機能回復です。再発防止のためには血圧の管理が重要です。130/80mmHg 以下にコントロールする必要があります。出血しやすい場合には110/70mmHg以下を目指す場合もあります。機能回復のためにはリハビリが大切です。脳細胞は一回障害を受けると二度と元に戻りません。しかし脳の異なる部位が、障害を受けた部位に代わって働くことができます。リハビリはそのために行います。ただし、脳が新しい機能を獲得するのは大変です。赤ん坊が歩けるようになるまでより時間がかかります。リハビリの成果はすぐには出ませんので、粘り強い努力が必要となります。

    上野循環器科・内科医院  上野一弘

  • 月報 「聴診器」 2009/12

    月報 「聴診器」 2009/12/1

    ようやく、新診療所が完成しました。事務的な手続きもうまくいきそうなので12月初旬には移動できそうです。自動ドアですので出入りが楽になると思います。待合室も広くてきれいになります。検尿は専用のトイレと検尿コップ置きを使ってください。

    新しい診療所では、今まで以上に良いサービスと、良い医療を提供できると思います。楽しみにしておいてください。

     

    11 脳卒中⑥

    麻痺などの症状が出て病院に行くと、医師は脳卒中を疑います。そこで、さまざまな検査をします。今回は代表的なものをいくつか説明します。

     

    CT:脳の検査の代表です。一般に「頭の検査」と言えばこれを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。CTはレントゲン検査の一種です。あらゆる方向からX線を照射し、コンピューターでどの場所がどれぐらいのX線透過度かを計算し、画像にあらわします。人体の断面図を見るのでとても便利です。脳出血を起こせば、出血はCT画像では白く写ります。また、血腫が脳を圧迫している様子も分かります。これで、脳出血の有無、重症度などが分かります。脳梗塞の場合、発症してすぐにはCT画像には写りません。発症後しばらくすると黒っぽく見えるようになります。CTしかない施設では、脳卒中を疑いCTを撮った際に、脳出血や腫瘍がなければ脳梗塞急性期と判断しています。

    MRI:CTと同じように体の断面が見られる検査です。一般には「出来のいいCT」のように思われていますが原理が全く異なります。すべての物質は原子から成り立っていますが、原子には小さい磁石のような性質があります。MRIでは強力な磁石を使用して水分子の磁性を操作します。物質によって中にある水分子への影響が異なるので、これを画像にしたものがMRI画像です。難しいですね。実は、詳しい理屈は医者もよくわかっていません。CTと比べると、組織の質的な差が分かりやすい利点があります。このため、脳出血の急性期だけでなく、脳梗塞の急性期も診断できます。ただし、単純にCTよりMRIが素晴らしいわけでなく、撮影時間や空間分解能においてはCTのほうが勝っています。また、CTよりもMRIのほうがかなり高価なので持っている施設も限られてきます。

    血管造影:脳卒中は脳の血管の病気です。治療するときに脳の血管の情報が必要な時もあり、血管造影検査をする場合があります。検査では、カテーテルという細い管を足の付け根から挿入し、脳の血管に到達させ、造影剤を流し込みます。この検査でどの血管が詰まっているか、どこに動脈瘤があるかが分かります。最近ではCTやMRIでも血管の様子が分かるようになってきています。

    超音波検査:脳卒中の分野でも超音波検査をする場合があります。経食道心エコーでは普通の心エコーでは見えにくい左心房を詳しく見ることができます。心源性脳塞栓の時には左心房に血栓を見つけることができます。頸動脈エコーでは頸動脈の狭窄度がわかります。

     

    上野循環器科・内科医院  上野一弘

  • 月報 「聴診器」 2009/11

    月報 「聴診器」 2009/11/01

     

    ながらくご迷惑をおかけしていた新診療所ですが、ようやく完成が近づいてきました。このまま、順調に行けば年内には新診療所に移転できそうです。

     

    11 脳卒中⑤ 脳梗塞その2

    前回は脳梗塞の症状について説明しました。脳梗塞は脳の血管が詰まって脳細胞の一部が死んでしまう病気です。どこの部分の脳細胞が死ぬかによって症状が異なります。血管の詰まり方にも種類がありますが、大きく動脈硬化性脳梗塞と心源性脳塞栓に分けられます。

    高血圧や糖尿病により動脈硬化が進行します。動脈硬化が進行すれば、動脈の壁が厚くなり、内腔が狭小化していきます。プラークという脂の塊が血管の壁に出来ることもあります。動脈硬化性の脳梗塞には、「ラクナ梗塞」と「アテローム血栓性脳梗塞」に分かれます。

    ラクナ梗塞は脳の穿通枝という細い動脈が狭くなり小さな脳梗塞を起こすものです。症状が無い場合もあります。アテローム血栓性脳梗塞はもう少し太目の血管の閉塞で起こります。血管のプラークが破けると血液がそこで固まり血栓を作ります。この血栓が大きければ血管が詰まってしまい、脳梗塞を起こします。

    心源性脳塞栓症は心臓でできた血栓が、血流に乗って脳に届き、脳の血管が詰まってしまう病態です。心臓で血栓が出来る原因としては、不整脈や弁置換術後があります。心房細動という不整脈では、心房が常時震えた状態になっています。このため、心房内で血液はゆっくり流れます。川が淀んだ場所を想像してください。血液は流れていないと固まる性質がありますので、心房細動時の心房では容易に血栓を形成してしまいます。この、心房細動による脳梗塞は長島茂雄さんが発症したことでも有名です。

    重症の弁膜症で人工弁置換術をした場合にも血栓を作ります。血液は異物に接すると固まる性質があるため、機械弁で血栓を作りやすい傾向があります。人工弁に大きな血栓が出来れば弁がうまく動かなくなって心不全を起こします。そこまで大きくはない血栓が出来れば、血流に乗って脳に運ばれ脳の血管をつめてしまいます。総理大臣だった小渕恵三さんの脳梗塞がこのパターンです。まれですが、心臓腫瘍などで腫瘍の一部がちぎれ飛んで、脳塞栓を起こすこともあります。

    少し変わった脳塞栓症もあります。足などの静脈で血栓を作ることがあり、深部静脈血栓症と呼ばれます。足がはれたり、むくんだりする原因となります。この血栓が血流に乗って飛んでいくと心臓から肺動脈へ流れ、肺の血管が詰まります。これは肺塞栓と呼ばれます。俗に言う、エコノミークラス症候群ですね。まれに、心臓に小さな穴が開いている人がいますが、この場合、静脈からの血栓がこの穴を通ることがあります。血栓が穴を通ると動脈に血栓が流れ、脳梗塞を起こすことがあります。これは奇異性塞栓と呼ばれます。

    上野循環器科・内科医院  上野一弘

  • 月報 「聴診器」 2009/10

    月報 「聴診器」 2009/10/1

     

    新型インフルエンザ徐々に増えています。大流行した沖縄の報告では入院を要した症例が0.5%、重症例が0.02%、死亡例が0.004%だったそうです。重症者は思ったより少なかったようですが、働き盛りの人の感染が多く、社会的インフラの維持が大変だったそうです。

    油断は禁物ですが、過剰に恐れることはないとの印象を受けました。

     

    11 脳卒中④ 脳梗塞

    今回は脳梗塞について説明します。脳梗塞は脳の血管が詰まって脳細胞の一部が死んでしまう病気です。どこの部分の脳細胞が死ぬかによって症状が異なります。右手を動かす脳細胞が死んでしまえば、右手が動かなくなります。左手の感覚を感知する脳細胞が死んでしまえば左手の感覚が鈍くなります。

    脳梗塞が麻痺として発症する場合は、片方の手足の麻痺がでます。右なら右手と右足が麻痺します。左なら左手と左足が麻痺します。左右同時に麻痺が出ることはほとんどありません。これは、脳の運動野で同側の手足を動かす神経細胞が近くに存在するためです。感覚障害の場合も同様に片方だけに出ますが、同側の口の周りの痺れを伴うことが多いようです。同側の手足の感覚をつかさどる神経細胞と、口の周りの感覚をつかさどる神経細胞が近くにあるためです。

    言葉がうまく出なくなるのも、脳梗塞を疑う症状です。これには、言葉を思いついてもうまくしゃべれなくなる「構音障害」と、言葉そのものを思いつけない「失語」という状態があります。構音障害はしゃべる筋肉の麻痺によるもので、失語は運動性言語中枢の障害です。

    食べ物がうまく飲み込めなくなる場合もあります。嚥下障害と呼ばれます。嚥下障害の問題は二つあります。一つは食事量が減るための栄養不足です。もう一つは、食べ物が食道ではなく気管に入ってしまう誤嚥です。誤嚥は肺炎を引き起こすため予後を悪化させる原因となります。

    小脳に脳梗塞が起これば、ふらつきが出現します。ぐるぐる回るようなめまいよりも、ふわふわするようなめまいが多いようです。足をそろえて立てなくなったりもします。

    珍しい症状もあります。後頭葉に脳梗塞が起きれば視野障害が出ます。これは、「右目が見えない」といったように、右目左目に起こるものではありません。右視野が障害を受けた場合には、右目の右視野と左目の右視野が見えなくなります。左視野障害であれば、両目の左視野が見えなくなります。聞こえが悪くなることもあります。耳や鼓膜には問題なくとも、脳の言語を理解する部位に脳梗塞が起こると、言葉の内容がわからなくなります。音は聞こえているのに、言葉が理解出来ない状況です。

    はっきりとした症状で無く、認知症として脳梗塞が発症する場合もあります。脳血管性認知症と呼ばれます。あちこちに、小さな脳梗塞が沢山ある場合になりやすいようです。

    上野循環器科・内科医院  上野一弘

  • 月報 「聴診器」 2009/09

    月報 「聴診器」 2009/09/01

     

    新型インフルエンザがまた増えてきました。毒性は変わらないものの、7月の第一波よりも感染者の数はかなり増えています。今後、感染者の数はさらに増えてくると思います。

    当院では、院内での患者さん同士での感染を避けるため、発熱のかたは午後に来ていただくようにお願いしています。また、車で来られたかたは、車中で検査をさせていただく方針です。ご面倒をおかけしますが、ご理解とご協力をお願いします。

     

    11 脳卒中③ 脳出血

    今回は脳出血について説明します。脳出血は脳の血管が破れて出血をする病気です。血腫が脳を圧迫するため様々な症状が出ます。脳出血にはいくつかの種類があります。

    ⅰ)クモ膜下出血:脳の表面の血管が破ける病気です。出血はクモ膜下腔という脳と頭蓋骨の隙間にたまります。出血をすると脳の表面の膜が刺激されるため、激しい頭痛が出現します。「今までに無い頭痛」「バットで頭を殴られたような痛み」などと表現されます。嘔吐や意識を失うことも多く、場合によっては心肺停止状態となります。診断はCTスキャンでなされます。ただし、出血量が少ない場合には診断が難しく、後日の再検査で分かったり、髄液検査で判明するときもあります。原因は動脈瘤という血管の瘤が大多数を占めます。脳動脈瘤では血管の分岐部によくでき、前回説明したウイリス動脈輪が動脈瘤の好発部位といわれています。くも膜下出血は家族内発生が多いことが知られています。家族にくも膜下出血の方が多い場合には、動脈瘤のチェックを行うことが勧められています。動脈瘤以外の原因としては、動静脈奇形、外傷などがあります。

    ⅱ)脳内出血:脳の奥のほうの血管が破ける病気です。症状は破ける血管の場所によって異なります。大脳奥での出血では、半身の麻痺や言語障害、意識障害を呈します。小脳出血では頭痛やめまいなどを呈します。脳内で出血すれば血腫が脳を圧迫します。脳は圧迫されると腫れる為、さらに全体が圧迫されることになります。特に頭蓋骨の縁で脳が圧迫されると、脳の生命維持部位が損傷し、死亡することになります。

    脳内出血の原因は高血圧が最も多いといわれています。現に、日本人の平均血圧が下がるにしたがって脳内出血の発症も減ってきています。血圧のコントロールが最大の予防策です。

    ⅲ)外傷性脳出血:頭部への外傷に伴って出血をすることがあります。交通事故などでは急性硬膜外血腫や外傷性クモ膜下出血などをきたします。外傷時に脳出血が無くても、2-3ヶ月かけてじわじわ出血し、慢性硬膜下血腫を発症する場合があります。これは脳の外の膜と頭蓋骨の間に血腫ができる病気です。歩行障害、認知症症状、尿失禁などを呈します。症状が緩やかに進行するのでなかなか気づかれないこともあります。抗血小板剤を飲まれている方や高齢者などでは、軽くぶつけただけでも慢性硬膜下血腫が出来ることがあります。あやしい症状があれば検査を勧めます。

    上野循環器科・内科医院  上野一弘

  • 月報 「聴診器」 2009/08

    月報 「聴診器」 2009/08/01

     

    現在、当院は新診療所を建築中です。現行の診療所は、約30年前に父が建てたもので、僕も子供のころからなじみのある建物です。しかし、①水道管が漏れるようになった、②急患に対応するような造りになっていない、③待合室のスペースが狭い、④多数のスタッフと多数の患者さんに向いた設計でない、などの理由で新診療所を建築することとしました。工事期間中は、駐車場が狭くなり、皆様にご迷惑をおかけします。新診療所では今まで以上に、よい医療が出来るように頑張ります。

     

    11 脳卒中② 脳の血管

    前回は脳の構造について大まかに説明しました。脳も体の臓器ですので血管から血液が供給されて働くようになっています。脳は体全体の2%程度の重さしかありませんが、血流は全体の20%が供給されています。脳にいく血管は首の血管から始まります。総頚動脈と椎骨動脈です。それぞれ左右に一本ずつありますので4本の血管で脳に血液を送っていることになります。総頚動脈は直径1cm程度の血管で、首の前方にあるため容易に手で触れます。椎骨動脈は3mm程度の血管で、首の後ろの骨の中を通っています。総頚動脈は顎の付近で内頚動脈と外頚動脈に分かれます。

    椎骨動脈は左右が一本の脳底動脈となり脳幹や小脳に血液を送ります。左右内頚動脈と脳底動脈は大脳の下で「輪」を作ります。これは首の血管が一本詰まってもある程度血流を確保するためといわれています。この「輪」はウイリス大動脈輪と呼ばれています。この動脈輪から、左右前大脳動脈、左右中大脳動脈、後大脳動脈が分かれます。それぞれの大脳動脈の間を結ぶ血管は交通動脈と呼ばれています。

    大脳動脈はさらに細かく枝分かれをしていきます。ここで大事なのは枝分かれをした血管は終動脈の形をとっていることです。枝分かれした血管同士の吻合が無い状態です。このため枝分かれした血管の一本が詰まってしまうと、他の血管が便宜を図って血液を供給することが出来ません。すると、詰まってしまった血管が養っていた脳細胞が死んでしまいます。

    前大脳動脈は主に前頭葉に血液を送り、中大脳動脈は側頭葉と頭頂葉に血液を送り、後大脳動脈は後頭葉に血液を送ります。それぞれの血管は大脳の表面を走行しますが、途中で穿通枝という細い枝を脳の奥に出していきます。

    以上は動脈の話ですが、脳にももちろん静脈があります。脳の静脈は脳の表面を走行するものと、脳底部を走行するものがあります。すべての静脈は頚静脈に集まり上大静脈から心臓に帰っていきます。

    上野循環器科・内科医院  上野一弘

  • 月報 「聴診器」 2009/07

    月報 「聴診器」 2009/07/01

     

    新型インフルエンザ騒動がとうとう宗像市にもやってきましたね。感染は下火になっているようです。ただし、本番は秋以降の第二波といわれています。現に、今が冬のオーストラリアでは新型インフルエンザが猛威を振るっているそうです。今のところ、新型インフルエンザは、このまま弱毒性で若年者だけを標的にして入るようですが、秋になるまでにどんな変異をするか分かりません。僕も、注意深く情報を集めていくつもりです。

     

    11 脳卒中① 脳の構造

    今回からは脳卒中の話です。ただし、僕自身は脳の専門医ではありません。しかし、心臓や血圧といった循環器疾患と脳卒中は、密接な関係があるので、あえてとりあげることとしました。脳卒中は正式には「脳血管障害」とよばれ、「脳出血」と「脳梗塞」に分けられます。脳の血管が、破ければ脳出血が起こり、脳の血管が詰まれば脳梗塞が起こります。全く逆の病気のようですが、両方とも動脈硬化が関係している場合が多いのです。

    脳はニューロンという神経細胞が140億個ほど集まって出来ている臓器です。全身から集まる情報をまとめ上げ、神経やホルモンを通して体のコントールを行います。思考や記憶も脳の働きです。ニューロンは沢山の手と長い一本足をもった構造をしています。この手でニューロン同士が連絡を取り合います。長い一本足は遠くの場所まで情報を伝える役割をしています。脳は、大きなキャベツと小さなキャベツが重なったような構造をしています。上のキャベツが大脳、芯の部分が脳幹、下のキャベツは小脳になります。キャベツと異なるのは、芯が上下を貫いていることです。したがって脳幹部は大脳と小脳をつなぐ役目もしています。

    脳幹部は非常に大切な部分です。呼吸や循環維持など生命活動の動きをコントロールしています。脳幹部は人間の生命維持装置なのです。小脳では体のバランスや、手足の動きの協調性をつかさどっています。大脳は外側の大脳皮質と奥にある間脳に分けられます。間脳には視床や視床下部が含まれます。性欲や食欲などと関係している部位、情動に関する部位、スムーズな運動を行う部位、ホルモンで体を統率する部位など多彩な機能があります。大脳皮質からでてくる神経線維が通る場所でもあります。

    外側の大脳皮質はニューロンの本体部分を多く含み、前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉などに分かれます。このうち、前頭葉は意志や思考を担当し、頭頂葉は体の感覚と動きを担当し、側頭葉は記憶や聴覚を担当し、後頭葉は視覚を担当します。大脳は左右の二つに分かれています。右脳では左半身の動きや感覚を、左脳では右半身の動きや感覚をコントロールしています。言語の理解は左側頭葉で、計算は左頭頂葉で行われていることが多いそうです。

     

    上野循環器科・内科医院  上野一弘

  • 月報 「聴診器」 2009/06

    月報 「聴診器」 2009/06/01

     

    新型インフルエンザ騒動は少しずつ落ち着いてきているようですね。宗像でも保健所を中心とした取り組みを行っています。6月5日は発熱外来の当番なので早めに、閉めさせてもらいます。ご面倒をおかけしますが、ご理解をお願いします。

     

    10 脂質異常症⑥  薬物療法

    今回は、脂質異常症の薬物療法について説明します。

    1. スタチン系スタチンには皮疹や肝障害といった一般的な副作用以外に「横紋筋融解症」という特有の副作用があります。手足の筋肉が壊れて、全身がだるいような痛みが出てきます。重症の場合には尿が赤黒くなります。採血検査ではCPKという筋肉に含まれる酵素が異常に高くなります。発生率は1000人に一人程度とかなり低いのですが、重篤な副作用なので定期的に採血検査をして早期発見に努めています。
    2. なお、世界初のスタチンは日本人の遠藤先生が開発しています。医学の進歩に著しい功績があり、毎年のようにノーベル賞の候補になっています。
    3.  高コレステロール血症に対して使用する薬です。クレストール、リピトール、メバロチンなどがスタチン系の薬です。スタチンは肝臓でのコレステロールの合成を邪魔する薬です。悪玉のLDLコレステロールを減らし、善玉のHDLコレステロールを増やす働きがあります。高コレステロール血症の人にスタチンを投与すると、心筋梗塞の発症を半分程度に抑えられます。また、心筋梗塞を起こした人にスタチンを投与すると寿命を延ばすことが分かっています。
    4. フィブラート系副作用はやはり「横紋筋融解症」が特徴的です。特に、スタチンと併用すると横紋筋融解症が発生しやすくなります。
    5. 中性脂肪を下げる薬です。ベザトールやリピディルがこれにあたります。中性脂肪を下げると同時にHDLコレステロールを増やします。動脈硬化の進行を遅らせる働きがあり、スタチンと同じように予後を改善します。
    6. エゼチマイブ、コレスチラミン重篤なものではありませんが、便秘や吐き気といった消化器症状の副作用が多いのが特徴です。 上野循環器科・内科医院  上野一弘
    7. コレステロールを下げる薬です。肝臓はコレステロールを合成しますが、一部のコレステロールは胆汁から十二指腸に分泌され、さらに肝臓に再吸収されます。エゼチマイブやコレスチラミンは腸管で働いてコレステロールの再吸収を抑制します。効果は弱めで、スタチンほどコレステロールは下がりません。予後の改善効果も十分には検討されていません。スタチンで副作用が出た場合や、効果が不十分な場合に使用されます。

発熱や風邪症状のある方は、来院前に電話でご連絡をお願いします。

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