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  • 月報 「聴診器」 2011/11

    月報 「聴診器」 2011/11/01

    ついこの間まで、「暑い暑い」と言っていた気がしますが、もうすぐ冬の気配ですね。朝晩は驚くほど冷えますね。我が家の犬は、寒いのが苦手なので全然外で遊ばなくなりました。育て方が、過保護だったのではと反省しています。

     

    13 検査 ⑪内視鏡

    僕も時々、人間ドックで検査をしますが、やっぱり憂鬱なのは「胃カメラ」ですよね。必要とはわかっていても、あの気持ち悪さは慣れることができません。

    「胃カメラ」は上部消化管内視鏡検査の俗称です。内視鏡は、光学機器を体内に挿入し、画像を撮影する検査です。剣を飲む大道芸人に望遠鏡のような「硬性胃鏡」を挿入して胃を観察したのが始まりといわれています。今のようなぐにゃぐにゃ曲がる内視鏡は日本の東京大学とオリンパスが開発したものです。吉村昭の「光る壁面」のモデルでも有名ですね。当初はファイバーの先端に撮影カメラが付いた構造でした。1960年代になると光ファイバーを利用して手元で画像を見ながらファイバーを操作できるようになります。その後、ビデオスコープが開発されます。ビデオスコープは先端に小さなビデオカメラを付け、電気信号に変えてファイバーの手元に画像を送るシステムです。大きな画像で見ながら操作でき、術者だけでなく周りのスタッフも、患者さん自身もリアルタイムで画像を見ることができます。ファイバーもより細くなり、今では鼻からファイバーを挿入することもできるようになりました。

    内視鏡は様々な形で発展をしています。まず、胃以外にも挿入できるようになりました。大腸ファイバーや気管支鏡検査はごく普通に行われています。耳鼻科では日常診療で短い内視鏡を使用します。泌尿器科では膀胱内視鏡、婦人科では子宮の観察に使用されています。前回説明したように血管内視鏡も開発されています。

    より詳しい検査や治療もできるようになっています。内視鏡の先端に超音波検査装置を付けたものがあります。超音波内視鏡と呼ばれます。内視鏡では表面の病変しかわかりませんが、超音波内視鏡を使用すると病変の奥の様子まで観察できます。内視鏡の横に小さな穴を作り利用することもできます。鉗子という組織をとってくる部品を入れ、病変部を採取することもできます。液体を吸引して性状を調べることもできます。止血クリップを使えば、胃潰瘍の出血を止めることもできます。この延長でポリープや早期胃がんの治療ができます。細い針金をわっかにして病変をくびり、電気を通して焼切るとポリープを切除できます。

    近年では内視鏡をお腹や胸に挿入して手術をするようになっています。腹腔鏡下手術、胸腔鏡下手術と呼ばれます。大きく切開する方法よりも傷が少なくて済み、術後の回復も早いそうです。また直視下では見にくい場所の手術もやりやすくなったそうです。頭蓋内鏡を使用した手術ではこれまで取れなかった血腫や腫瘍の切除もできるようになったそうです。

    カプセル内視鏡も最近の話題になっています。カプセル内視鏡は消化管に入ると撮影を行い、画像を電波にして体外に送ります。電波は体に装着した受信機でキャッチしたのち画像化されます。もちろん、体外に排出されたカプセルは再利用されません。非常に負担の少ない方法ですが、操作性や画質の面ではファイバーに劣ります。しかし、いつの日か技術開発が実を結び、カプセル内視鏡がスタンダードになる日が来ると思います。

    上野循環器科・内科医院  上野一弘

  • 月報 「聴診器」 2011/10

    月報 「聴診器」 2011/10/01

    気が付けばもう10月ですね。今年は一気に涼しくなり、風邪をひいた人が多かったようです。

    インフルエンザワクチンは手に入り次第接種を開始しようと思います。10月下旬には接種できると思います。

     

    13 検査 ⑩血管造影

    CTやMRIでより詳しく見るためには造影剤を使用して検査をする場合があります。造影剤はCTやMRIに写るような液体を血管に流して行います。すると、血流が多いのか少ないのか、血管の走行がどうなっているかがわかります。もっと、血管の様子を詳しく見たいときには血管造影検査を行います。

    血管造影検査ではカテーテルという細い管を血管の中に入れて行います。カテーテルを足の付け根や手首などの浅い部分にある血管に入れます。カテーテルの中にはガイドワイヤーをいれて、ガイドワイヤーのしなやかな先端を先行させて進めます。血管は複雑に枝分かれしていますが、解剖学的知識とガイドワイヤーの曲がった先端を利用して、目的の血管までカテーテルを進めます。目的の部位までカーテルが到達できれば、ガイドワイヤーを抜いて造影剤を流します。造影剤を流しながらレントゲン撮影をすると血管が写しだされ、血管の走行や狭窄具合などを確認します。狭窄部のより細かな形も詳しく知ることができます。血管が詰まった場所に別の血管から血流があるかどうかもわかります。

    よく観察するためには、いろんな工夫がされています。心臓の血管を撮影するときは、撮影装置をぐるぐる回して様々な方向から動画で撮影します。頭の血管や腹部の血管ではDSA(Digital Subtraction  Angiography)という方法が使われます。これは血管造影後のデジタル映像から血管造影前のデジタル映像を引き算することで、血管だけを強調して画像化する技術です。また、以前は微妙に撮影方向を変えて3D表示にすることも行われていましたが、右目と左目で別々の画像を見て頭の中で重ねあわさなければならず、見るだけでも修練が必要でした。今はあまりやっていないようです。

    心臓の血管の検査では血管造影の手技を利用してほかの検査をすることがあります。たとえば、カテーテルの中から細い超音波検査器を血管に入れて検査を行うことができます。血管内エコーと呼ばれます。血管の厚みや、動脈硬化の性状、ステントの広がり具合などは血管造影だけでは分かりません。血管内エコーを使うとこれらのことがよく分かるようになり、治療に役に立ちます。

    流速計を入れることもあります。狭窄の前後では血管内の流速が異なるため、血流速度を測定することで狭窄の程度を知ることができます。小さな内視鏡を入れることもできます。ただし、内視鏡を入れただけでは血液しか映りませんので、透明な液体を同時に流します。

    採血をする場合もあります。血液の酸素濃度を複数の場所で測定し、酸素消費量も測定すると心拍出量を正確に測定することができます。また、心臓の壁に穴が開いていると思わぬ場所で酸素濃度が上がります。これを利用して、先天性心疾患の診断をしたり、重症度を判定します。ICUなどでは継続的に肺動脈酸素濃度を測定します。血行動態と肺動脈酸素濃度は密接な関係があるからです。ホルモン産生腫瘍が疑われる場合は、カテーテルを使用して局所のホルモン濃度を測定します。

    上野循環器科・内科医院  上野一弘

  • 月報 「聴診器」 2011/09

    月報 「聴診器」 2011/09/01

    今年は熱中症が多かったです。多いときには点滴室が足りないほどでした。酷暑も一段落してからは感染症が多いようです。肺炎も少し増えた印象がありますので、皆様も気を付けてください。

     

    13 検査 ⑨MRI

    今回はMRIについて説明します。MRIの原理は非常に難しく僕もさわり部分しか理解できていません。以下の説明も非常に単純化したものです。すみません。

    画像診断の相談をするときにMRIとCTを混同している方が多いような気がします。違う検査とはわかっていても「MRIはCTの上級バージョン」と思っている方も多いようです。確かにCTとMRIでは出でくる画像は似ています。CTが進歩してMDCTになると体の横断図だけでなく、縦切り画像や3D表示ができるようになったためますます似てきました。しかし、CTとMRIは全く原理が異なり、見ているものも違います。

    MRIは核磁気共鳴画像法(Magnetic Resonance Imaging)の略です。強い磁石を利用して画像を作る方法で、開発者のポール・ラウタバーとピーター・マンスフィールドにはノーベル賞が送られています。すべてのものは原子からできていますが、原子には磁性を持つものがあります。ただし、原子の向きはバラバラになっているので、物質全体としては磁性がありません。強い磁力をかけると強制的に原子の極性がそろいます。ここにパルス波をかけたり、異なる方向の磁場をかけると原子から信号が出ます。MRIではこの信号を解析して画像を構成しています。

    どの原子を標的にしても画像は構成できますが、一般には体内に一番多い元素である水素原子を標的にして信号を取り出します。水素原子はその周りの環境に応じて信号の特性を変えますので、信号を解析することで質的な評価ができるようになります。信号の取り出し方にはいろいろな方法がありますが、T1強調画像とT2強調画像が代表的です。T1強調画像では水分が黒く写り、脂肪が白く写ります。T2強調画像では水は白く写り、骨は黒く写ります。

    CTと比べるとMRIは質的診断が得意です。撮影したものの構造変化だけでなく、質的な変化もわかります。このため、腫瘍の成分や骨折、筋断裂、早期の脳卒中の診断に役立ちます。骨に邪魔されずに細かな組織を見れますので、骨に囲まれた臓器の検査に優れていています。たとえば脳下垂体腫瘍や聴神経鞘腫は骨に囲まれた部分に発生するためかなり大きくならないとCTでは見えませんが、MRIでは比較的小さい段階で発見が可能です。造影剤を使用すると血管が描出てきますが、造影剤を使用せずともある程度の血管の様子がわかります。動いている液体を鑑別できるためです。これを応用して、胆管の描出も可能です。

    一方、強い磁力を使用するため金属が体に入っている場合は使用できません。金属プレートやペースメーカーは当然ですが、入れ墨やカラーコンタクトなども影響があります。検査中は細長い穴に入って行いますので、閉所恐怖症がある人も検査に不向きです。今はかなり改善されましたが、検査中はかなり大きな音がします。CTよりも時間がかかりますので、動いている臓器はきれいに画像が出ません。肺などはCTのほうが綺麗に見えるでしょう。

    何でもかんでも、CTよりもMRIが優れているわけではありません。目的に沿って検査法を選んでいます。

    上野循環器科・内科医院  上野一弘

  • 月報 「聴診器」 2011/08

    月報 「聴診器」 2011/08/01

    蒸し暑い日が続いていますが、みなさん大丈夫でしょうか。今年は例年にも増して熱中症が多い印象があります。気温自体は昨年のほうが高いようですが、湿度が高いこと、温度変化が激しいことが要因と思います。直射日光を浴び続けても熱中症になりますが、風のない室内でも熱中症は発生します。人間は代謝などで生じた余分な熱を、汗による気化熱で外部に放出し体温を保っていますが、湿度が高いとこの機能がうまくはたらかなくなり、熱がたまってしまいます。水分を十分にとってください。3-4時間に一回は排尿に行く程度の量が目安です。

    13 検査 ⑧放射線検査 シンチグラムなど

    前回まではX線を照射して行う検査について説明しました。放射線検査では放射線物質を使用して行う検査もあります。代表的なものはシンチグラムです。

    シンチグラムでは放射性同位元素を使用します。すべての物質は原子からできています。原子はそれぞれ固有の数の陽子と電子と中性子からできています。原子の性質は陽子と電子の数で決まりますが、原子の中には中性子の数が異なるものがあり、正常の原子とは重さが異なります。この原子のことを放射性同位元素といいます。この中性子が余分にある原子は不安定ですので、原子核が崩壊して別の原子になります。この際にガンマ線をはじめとした放射線を出します。この放射線を検出して画像にする検査がシンチグラムです。

    放射性同位元素は基本的には正常の原子と同じような動きをします。心筋シンチグラムではテクネシウムの同位元素を使用します。テクネシウム99mはガンマ線を出す放射性同位元素ですが、これで化合物を作ると血流にのって心筋に取り込まれます。この状態で、安静時にガンマカメラで撮影すると血流のある組織が写ります。次に、運動をさせて撮影をすると血流の乏しい部位は写らなくなります。結果的には、正常の心筋、血流の乏しい心筋、完全に壊死している心筋がわかります。この所見と冠動脈造影の所見を組み合わせて治療方針を決めます。冠動脈の狭窄部位に一致して血流の乏しい心筋を認めれば、血行再建術の対象になります。冠動脈に狭窄があっても心筋が完全に壊死してれば血行再建術を行っても効果が乏しいと予想されるので、血行再建術の対象にはなりません。シンチグラムでは脳血流や肺血流も見ることができます。特殊なものでは癌の骨転移を探す骨シンチや炎症部位を探すガリウムシンチがあります。

    PET検査は厳密にはシンチグラムとはべつの検査ですが、やはり放射性同位元素を使用する検査です。PETでは放射線の検視機器がシンチと異なるため、CTのように断面を表示することができます。三次元構成にすることも可能です。がん検診などで使用されるFDG-PET検査ではフッ素18という放射性同位元素を使用します。これは陽電子(普通の電子は陰性)を放出します。フッ素18を使用してFDGというブドウ糖によく似た物質を作り体に投与します。がん細胞では代謝が亢進していますので、ブドウ糖が盛んに取り込まれ、FDGも同様に盛んに取り込まれます。そのため、がんがあれば集積亢進部位として画像に反映されます。ただし、もともと代謝が亢進している部位や尿路系は正常でも集積が亢進しているので、これらの部位のがんは検出することができません。フッ素18FDGを作るためにはサイクロトロンという装置で粒子を加速して作ります。特殊な装置のため、以前は限られた地域でしかPET検査はできませんでしたが、最近では民間病院でも自前でサイクロトロンを用意して、健診に役立てる施設も出てきました。

    上野循環器科・内科医院  上野一弘

  • 月報 「聴診器」 2011/07

    月報 「聴診器」 2011/07/01

    当院は平成15年7月に父の「上野内科医院」を継ぐ形でスタートしました。早いもので8年もたちます。その間、来院される方の数も、一人一人の情報も増えてきました。スペースの狭さについては一昨年に新診療棟を建てることで対処しました。情報量への対処としては、この7月から電子カルテを導入することとしました。

    情報の電子化には、良い面もあれば、悪い面もあります。情報を形通りに処理するのは得意ですが、柔軟な対応は苦手のようです。特に、我々のように初めて電子カルテを使用するケースではうまくいかないことも多いと思います。しばらくは、診察や会計処理に時間をいただくかもしれません。

    13 検査 ⑦放射線検査 CTスキャン

    前回はX線検査について説明しました。X線検査を劇的に改善した検査がCTスキャンです。CTスキャンはComputed Tomographyの略で、コンピューターを使用して体の断面写真を構成する方法です。1971年、ハウンズフィールドとコーマックによって発明されました。彼らはノーベル医学賞を授与されています。

    体のまわり180度からX線をぐるりと照射し、対側でX線吸収値を測定します。体の断面を多数のブロックに分け、それぞれのX線吸収値を仮想し演算を組み立て、コンピューターで計算をします。各ブロックのX線吸収値がわかれば、それを画面に再構成します。こうして、体の輪切りを見ているような画像が得られます。こうすると、骨などは白く描出され、水や空気は黒っぽく描出されます。

    CTを使用すると、構造的な異常がよくわかるようになります。脳や肺の異常もよくわかるようになります。特に脳外科では、出血や腫瘍の早期診断に大変有用です。ずっと昔は神経所見だけで腫瘍の場所を見つけていたそうですが、さぞ大変だったろうと思います。造影剤を使用すればさらに詳細な情報が得られます。造影剤はX線吸収値が高い薬剤で、CTでは白く写ります。このため、造影剤を使用すると血管が白く写ります。血管の大きさや、走行がよくわかります。たとえば、動脈瘤のチェックなども可能になります。血流が豊富な部分は白っぽく写ります。たとえば腫瘍が見つかった時に、造影検査をすると腫瘍が血流の豊富なタイプか、血流の乏しいタイプかがわかります。白くなり具合によって腫瘍の種類がわかることもあります。また、造影剤を流してからCTをp撮るまでの時間を変えることで、異なる画像を得ることもできます。最初は動脈が白く写り、組織が白くなり、最後に静脈が白くなります。異なる画像を調べることで、異常の検出力が上がります。

    CT機器の進歩は目覚ましいものがあります。最近では一度で複数のスライスを撮影する方法が可能になっています。この方法を使用すれば、撮影時間は短くなり、画像は精密になります。画像を重ね合わせて三次元的に表示する方法も可能です。頭蓋骨のように複雑な構造物も、三次元表示をすることで、異常がわかりやすくなります。心臓のように動く臓器でも詳細な構造がわかります。以前は狭心症の精密検査のためにはカテーテルで冠動脈造影検査をしていましたが、今ではある程度まではCTで分かるようになってきました。症例や病院によってはまずCTで冠動脈の検査をしたうえで、狭心症が疑わしい場合にだけカテーテル検査をするようになってきています。当初は16列同時撮影の装置でしたが、最新式の機種では320列同時撮影のものも出てきています。

    上野循環器科・内科医院  上野一弘

  • 月報 「聴診器」 2011/06

    月報 「聴診器」 2011/06/01

    いつの間にか梅雨入りですね。この季節にはおなかを壊す人が多くなってきます。冬にも下痢を起こす感染症がはやりますが、冬の下痢の多くウイルス性で自然に治癒します。しかし、梅雨の季節の下痢は、細菌が関与し、重症化する場合があります。手洗いや調理用具の衛生を心掛けてください。

     

    13 検査 ⑥放射線検査 X線写真

    病気にはいろいろな見方があります。病気の構造的異常に注目して行う検査が画像診断です。放射線検査、核医学検査、MRIなどがこれに当たります。放射線検査で、一番なじみが深いのはX線検査です。レントゲン検査とも言います。ご存知の方も多いと思いますが、X線は1985年、ヴィルヘルム・コンラート・レントゲンによって発見されました。レントゲン博士が放電管の実験中に偶然放射線の存在に気が付いたといわれています。レントゲン博士はこの功績により第一回ノーベル賞を授与されています。

    X線は放射線の一種です。1pm-10nmの波長の電磁波で、電子軌道の差によって発生したものを意味します。なお、同じ波長の電磁波でも核反応によって発生したものはガンマ線と呼ばれます。放射線にはそのほかにも粒子線と呼ばれる、アルファ線、ベータ線、中性子線などがあります。粒子線は検査に使用することはあまりありませんが、がんの治療に使用することがあります。

    X線検査装置では、電子を金属にあててX線を発生させます。X線発生装置とフィルムの間に対象物をおき、X線を照射後にフィルムを現像します。X線が当たった部分のフィルムは感光し黒くなります。このため、X線を通しやすいものは黒くなり、あまり透さないものは白くなります。空気はX線を通しやすく、肉や水はX線を少しだけ遮ります。骨や金属はX線をあまり透しません。たとえば、胸のX線写真を撮ると体の外は真っ黒に写ります。肺は空気が多いので黒く写ります。心臓や血管は灰色に写り、腹部はかなり灰白色となります。背骨などはかなり白く写ります。

    胸部X線写真では肺、心臓、大血管などを見ます。向かい合わせの状態で写真が出来上がります。両側に右肺と左肺が観察できます。真ん中に背骨と大血管が見えて、心臓は少し左寄りにあります。横隔膜から下は腹部になり白っぽく写ります。横隔膜の左下に黒っぽい影が見え、よく「これは癌じゃありませんか?」と聞かれます。これは胃の中の空気が写っているもので、心配はいりません。

    肺炎では、肺胞の中に膿がたまりX線の透過性が低下し、白く写ります。肺炎の部位が心臓や横隔膜に接していれば、心臓や横隔膜の境界線がぼやけます。医者はこれを「シルエットサイン」と呼んでいます。肺気腫では肺全体が過膨張するので、肺が縦に間延びし横隔膜が平坦になります。 また、含気量が多くなるので肺全体が暗く写ります。間質性肺炎では肺全体にカスミがかかったように白っぽく写ります。胸水がたまると、肺の外側に白い部位が見れるようになります。心不全では心臓が拡張したり、肺がむくんだ所見が見れます。大動脈瘤では大動脈が膨れて見えます。腹部X線写真では腸管ガスや腸腰筋の異常などを見ます。整形外科ではX線検査は多用され骨や、関節の異常のチェックに使用されています。

    腸管や尿管などをはっきり見たい場合は造影剤を使用します。撮影する時間をかえたり、連続的に撮影することで詳細な情報が得られます。連続的にX線で検査する方法は「透視」と呼ばれます。

    上野循環器科・内科医院  上野一弘

  • 月報 「聴診器」 2011/05

    月報 「聴診器」 2011/05/01

    先月は一時不在のため皆様にご迷惑をおかけしました。申し訳ありません。東日本大震災の医療支援のため4月16日から19日まで福島県いわき市に行ってまいりました。3月11日の震災発生時からさまざまな医療チームが現地で活動をしています。僕が参加したのは日本医師会が呼びかけたJ-MAT(Japan Medical Association Team)です。日本医師会は災害発生直後からJMATを立ち上げ、被災地の医療援助のために全国の医師の参加を募りました。僕もすぐに志願を表明しました。日程や派遣地などは医師会が調節しました。

    いわき市へは「福岡県第9班」として医師3名、看護師2名、事務職員1名でチームを組んで派遣されました。皆別々の医療機関の人間で、4月16日が初対面でしたが、志を同じくする者同士なのですぐに打ち解けることができました。羽田空港からは常磐自動車道を通って陸路でいわき市へ向かいます。道路はかなり凸凹し、家屋の塀もところどころ崩れていました。いわき医師会には福岡チームのほかに富山、愛知、山梨の医療チーム、それから茨城の薬剤師チームが集まっていました。各医療チームは6-8か所の避難所を回診するのが任務の内容でした。いわき市内の医療機関はなんとか復旧しており、重症患者さんや通院できる人は地元の医療機関が診療を行っていました。避難所の回診では、ストレス障害や血圧の変調、栄養の偏りなどをすくい上げることを第一目標としました。我々には、江名小学校、江名中学校、内郷コミュニティーセンター、御厩小学校、平工業高校、磐城高校、好間公民館、アリオスなどの避難所が割り振られました。避難所では、津波により帰る家をなくした人、原発の事故のため指定地域から避難してきた人、余震が心配で避難してきている人が混在していました。避難所を転々とし、「ここが三か所目」という方もいらっしゃいました。家族を亡くした方、仕事場を失った方も多くおられました。被災者の方々は比較的落ち着いていましたが、我慢することになれてしまっている印象でした。

    実際にお話を伺うと、不眠や血圧の変調、体の痛みなどの訴えが多く聞かれました。長引く集団生活や硬い床での寝起き、運動不足が応えているようです。食事に関しては、避難所間に差が見られました。ある避難所では、パンとインスタントラーメンが主でビタミンや蛋白が少ない傾向でした。一方、積極的に自炊をしたり、バーベキューをしたりなどで栄養が偏らないように気を配っている避難所もありました。プライベートに配慮した避難所もありました。段ボールや、ナイロン製の仕切りで家族単位の空間を作っていました。「よい運営をしているな」と感じた避難所は看護師さんや保健師さんが常駐していました。

    時間が開いたときに海沿いの集落や港を見に行きました。市内は地震の影響でところどころ崩れているものの、比較的平穏に保たれていました。しかし、海に向かって進むと、ある地点を境に風景が一変しました。運ばれてきたごみがガードレールにこびりつき、街路樹は潮のため枯れていました。一階部分が津波により破壊されている家が連なります。更に進むと、家屋の残骸だけが山のように積もっていました。車を止めて海岸から見渡すと、海沿いに同じ風景が延々と続いていました。今回の震災では400Kmにわたって沿岸部が被害を受け、同じような景色がずぅーっと続いているそうです。

    医師会で線量計を用意してくれていましたが、一度も数値が上昇することはありませんでした。大きめの余震は頻回に起こっていました。

    上野循環器科・内科医院  上野一弘

  • 月報 「聴診器」 2011/04

    月報 「聴診器」 2011/04/01

    東北関東大震災は大変な状況です。知人や親戚がいらっしゃる方も心配されていることとも思います。お亡くなりになられた方は誠に気の毒です。遺族の方々の悲しみも深いでしょう。

    避難されている方々も大変だと思います。家族を失い、帰る家もないかたもいらっしゃると思います。食糧や水も十分ではないようです。避難所ではプライバシーもない生活と思います。衛生面や集団生活の面からは感染症も心配です。阪神淡路大震災では避難所の方々の血圧が上がり、心疾患や脳卒中が異常に増えたことが知られています。対策にあたるべき医療機関も物質的被害は甚大です。人的インフラはなんとか維持できているようですが、現地の医師、看護師、保健師の献身的努力によるものと思います。自らも被災者たる現地の医療人が膨大な被災者のために不眠不休での努力をつづけているのだろうと思います。彼らの努力に頼るのも限界があると思います。私も同じ医療者として傍観はできません。

    日本医師会では全国の医師を組織して、被災地への医療援助を行っています。参加への募集がありましたので私も参加を表明しています。先日、4月16日から19日にいわき市に派遣されることが決まりました。その間、私は当院を空けることになります。定期処方だけは出せる体制を整えるつもりですが、診察等はできなくなります。申し訳ありませんが、その期間はできるだけ受診を避けていただきたいと思います。私が不在中に具合の悪くなった方は、医師会病院などの他の医療機関を受診してください。また、私が不在の件をお友達などに口コミで拡げていただければ助かります。皆様には、大変ご迷惑をおかけしますが御協力と御理解をお願い申し上げます。

     

    13 検査 ⑤超音波検査:その他のエコー

    当院では心エコーや血管エコーを盛んに行っていますが、一般的には腹部の検査で超音波を使用している診療所が多いようです。お腹の中には、肝臓、すい臓など多くの臓器がありますが、ほとんどを超音波検査で観察することができます。やり方はそれぞれの医師で異なりますが、僕は左側から診て行くようにしています。左わき腹にプローブを当てると左の腎臓や脾臓が確認されます。尿管結石などがあれば腎臓が腫れて見えることがあります。次に中心部に移りプローブを縦にして腹部大動脈を観察します。腹部大動脈瘤があれば、この時点で分かります。プローブを横にして膵臓を観察します。すい臓はエコーでは見えにくい臓器ですので、ここはゆっくり観察します。膵臓が観察できたら大動脈の周囲をよく見ます。まれに大動脈周囲のリンパ節がはれていることがあるからです。同じ部位からプローブを上に向けると肝臓が見えます。肝臓では腫瘤がないか、脂肪肝があるか、管内胆管が拡張してないかなどをチェックします。肝臓に埋もれるように胆嚢が見えます。胆嚢では結石やプリープなどをチェックします。そのほか、腫瘍や腹水を見落とさないように気をつけています。上手な医師では腸管を観察して盲腸や腸炎などの診断ができます。申し訳ありませんが、僕は腹部エコーはそこまで上手ではありません。すいません。

    甲状腺を超音波で観察することもあります。腫瘍のチェックのために行うことが多いのですが、甲状腺機能亢進症の時には鑑別に利用できます。バセドウ病では甲状腺の血流が増加し、亜急性甲状腺炎では甲状腺にエコー輝度が低い部位を観察することができます。他にも、乳房や関節など体の表面に近い臓器を観察する事ができます。

    上野循環器科・内科医院  上野一弘

  • 月報 「聴診器」 2011/03

    月報 「聴診器」 2011/03/01

    少しずつ暖かくなってきました。それにしても、今年の冬は寒かったですね。インフルエンザもはやりましたが、他の感染症との重複感染も見られ、いつもとは少し違った印象でした。気候がよくなって体調も安定するとよいですね。

     

    13 検査 ⑤超音波検査:頚部血管エコー、血管エコー

    当院で心エコーと同じぐらい多く行っているのは頚部血管エコーだと思います。高コレステロール血症、高血圧、糖尿病、喫煙などは動脈硬化を進行させ心筋梗塞や脳梗塞の原因となります。ただし、患者さん自身の動脈硬化になりやすさはまちまちです。同じような血圧や血糖値でも動脈硬化が進んでいる人もいればそうでない人もいます。これは、遺伝的要因で決まっているようです。しかし、ある人の動脈硬化が進行しやすいタイプなのかそうではないのかは、心筋梗塞や脳梗塞を発症するまで分かりません。そこで、頸動脈をエコーで観察して動脈硬化の進行具合を見ることで、間接的にリスクを評価しています。

    首にエコーを当てると頸動脈が観察できます。血管の内腔や壁の厚さが分かります。血管の壁の厚さを測ることで動脈硬化の程度を推察します。動脈硬化が進行するにつれて動脈の壁が厚くなってきます。進行した場合ではプラークという脂の塊が見られます。エコーでは、プラークは暗い灰色の塊として見えますが、場合によってはプラークが石のように硬くなり、エコーで白く見えることもあります。頸動脈の動脈硬化が進行している例では、全身の動脈も動脈硬化が進行していると予想できます。このような場合は、狭心症や脳梗塞の発症を警戒するようにしています。また、治療目標も厳しく行う必要があります。

    時々、大きなプラークが見つかるときがあります。プラークが大きくなり血管が詰まりそうになっています。血管が詰まってしまえば大きな脳梗塞を起こしますが、狭くなっているだけでは本人は何の症状もありません。エコーで断面図を観察して狭窄度を計測します。ドップラーを利用する方法もあります。狭窄が高度の場合は血流が早くなります。ドップラーで流速を調べて100cm/s以上あるときは、高度狭窄があると判断しています。プラークが血管をふさぎそうな時には専門医を紹介するようにしています。

    頚部血管エコーほどは行いませんが、エコーで他の部位の血管も観察できます。「歩くと足が痛くなる」という症状が出る閉塞性動脈硬化症という病気があります。足に血液を送る動脈が狭くなると起こる病気です。血管造影検査が基本ですが、表面に近い血管ならばエコーでも観察できます。

    高血圧の原因の一つに、「腎動脈狭窄症」という病気があります。腎臓に行く動脈が、動脈硬化のために細くなると、腎臓の血流が低下します。腎臓は血流が低下すると、血圧を上げるホルモンを出す性質があります。このため、腎動脈が細くなると血圧が上がります。エコーで腎動脈の血流を調べることができます。腎動脈の狭窄が高度の場合は、血流速度が速くなります。腎動脈狭窄が疑われればCTやMRIで精査をします。ただし、エコーで腎動脈を調べるのはかなり困難です。

    動脈だけでなく、静脈もエコーで観察できます。深部静脈血栓症では足の静脈に血液の塊が詰まります。エコーでは静脈に詰まった血栓や、その下の拡張した静脈を観察できます。

    上野循環器科・内科医院  上野一弘

  • 月報 「聴診器」 2011/02

    月報 「聴診器」 2011/02/01

    寒い日が続きますね。インフルエンザがかなり多くなっています。風邪や肺炎も多いようです。それ以上に心配なのは血圧が上がる人が多いことです。結果的に脳出血や心不全の悪化、心筋梗塞、大動脈解離も増えているようです。感染症は完治することが多いのですが、高血圧に伴う合併症は後遺症を伴います。寒い季節はより厳格な血圧コントロールが必要と思います。

     

    13 検査 ⑤超音波検査:心エコー

    前回は超音波検査の概要を説明しました。今回からは超音波検査の各論です。まずは、心臓超音波検査の説明です。心臓は胸のやや左側にある臓器でこぶしぐらいの大きさをしています。超音波は肺と肋骨を通りませんので、それらを避けるようにして検査をします。心臓超音波検査をする場合には左側が下になるように寝てもらいます。こうすると、心臓が胸壁に近付いて肺の影響を受けにくくなります。肋骨の隙間から超音波を出したり感知する装置(プローブ)は肋骨の隙間から当てるようにします。最初は胸骨左縁の第三肋間ぐらいから心臓を縦に切るような断面で検査をします。次に心臓を横断するような断面で観察します。ここで、プローブの位置を左わきにずらすと、心臓を下から観察することができます。それぞれの場所から、心臓の形態、動き、血流を観察します。

    まずは、Bモードで形態と動きを観察します。上行大動脈、左心房、左心室の大きさ、左心室の壁の厚さなどを測定します。肥大型心筋症や高血圧では左心室壁が厚くなります。拡張型心筋症で左心室が拡張し収縮が低下します。心筋梗塞では左心室の一部の動きが悪くなります。心室の動きが悪い場所に血栓が見つかるときもあります。弁の異常を認める場合もあります。弁狭窄症では、弁が石のように硬くなっていたり、開きが悪くなっています。弁に異常構造物が付いている場合もあります。感染性心内膜炎では弁に菌の塊がつくことが知られています。腱索断裂ではちぎれた腱索がぴらぴらと見えます。腱索とは弁がはきちんと閉じるようについている紐のことです。弁の枚数が違う場合もあります。正常の大動脈弁は三枚の弁から構成されていますが、大動脈二尖弁症では弁が二枚しかありません。逆に本来二尖弁である僧帽弁に弁が三枚ある場合があります。このときは修正大血管転位症を考えます。先天的に心臓に穴があいているのが見つかる場合もあります。

    左心室の動きは様々な方法で数値化します。よく行われているのはMモードを使用する方法です。Mモードでは時間軸を横に心臓の収縮を縦軸に表示されます。左心室が広がった時の直径と縮んだ時の直径の比をとることで、心臓の収縮率を数値化することができます。ただし、心臓は立体的なものですのでこの方法では正確に測れない場合もあります。断面図を利用しての測定ではもう少し正確に心臓の収縮率を測定できます。Bモードで左心室が広がった時の断面積と収縮時断面積を測定して収縮率を計算します。局所の動きが悪い時には数値化するのが難しいので、コメントを書いて記録に残します。

    ドップラー法では血流を観察します。血液は心臓の中を一方通行で流れますが、逆流を防ぐために四つの弁がついています。弁の閉じが悪ければ、血液は逆流します。ドップラー法では血液の流れている方向が分かるので、弁膜症で血液が逆流しているのを観察することができます。ドップラー法では血液の流れる早さも分かります。早さが分かれば圧格差を知ることもできます。ドップラー法を利用すれば、心エコーで心臓のむくみ具合や弁膜症の程度を知ることができます。

    上野循環器科・内科医院  上野一弘

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